インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

語学をあきらめずに続けるには

「あきらめたらそこで試合終了ですよ…?」とは、言わずと知れたマンガ『SLAM DUNK』に出てくる安西先生のセリフです。このセリフはひとりバスケに留まらず、およそ人生のあらゆる場面に敷衍できるからこそ名言となっているわけで、とうぜん語学もその例に漏れません。あきらめたらそこで終わり。スラブ語学者で言語学者でもある黒田龍之助氏がおっしゃる「外国語学習にとって最も大切なこと、それはやめないこと」も同じ真理をついた言葉だと思います。

そうは言うものの、語学というものはとにかく心折れる体験の連続みたいなところがありまして、きわめて継続が難しいもののひとつではないでしょうか。ネットで検索したところによると、例えば現在さまざまなサービスが乱立して過当競争気味になっていると感じるオンライン英会話でも、半年継続するユーザーは全体の2割ほどしかおらず、1年以上継続する方にいたってはパーセンテージがひと桁台にまで落ちるのだそうです*1

私はちょうど30歳のときに中国語を学び始めて、もう30年近く学び続けています。でもこれはたまたま自分の生業を中国語関係にしたから、つまりは仕事上必要だったため否応なしに学ばざるを得なかったという側面もあって、そうでなかったらここまで続かなかった可能性もあります。

5年ほど前に趣味、というよりほとんど「ボケ防止のため」に学び始めたフィンランド語は、中国語のように仕事上必要という縛りもないため、途中で何度もあきらめそうになっています。もとより語形変化が複雑すぎて、それらを覚えるだけでも大変な言語なので、たくさんいたクラスメートもいまや3人だけになってしまいました。

年初から始めたオンライン英会話は、いまのところ週3回のペースで継続できています。上掲のデータに照らせば「全体の2割」にまだなんとか留まり続けていることになります。こちらもあきらめずに先へ進みたいと思います。


https://www.irasutoya.com/2016/08/blog-post_504.html

もともと私はとにかく飽きやすい性格でしたが、語学だけはこうやってなんとか続いています。単純に語学が好きだから、楽しいからというだけなのかもしれませんが、個人的にはもうひとつ、「完璧を目指さない」というのが大切なポイントではないかと感じています。

このブログでも何度か書いたことがありますが、語学に完璧主義は禁物です。その時は腑に落ちなかったり、しっくり来なかったりしても、とりあえず不完全ながらも先に進んでいると、あとから「ふっ」と、あるいは「じわっ」と滲みるように分かってくることが多いのです、語学は。完璧主義を捨てることで心折れる経験も乗り越えやすくなりますし、またあきらめないで長く続けることができるようにも思います。

そしてまた、決して他人と比べないというのも大切です。私も若い頃は、特に中国語など誰にも負けたくないという思いで、キリキリと他の人に対抗意識を持ち、何かにつけて彼我を引き比べていました。そういうアグレッシブな感情が語学習得にプラスに働くこともあるかもしれないけれど、むしろ害のほうが大きかったんじゃないかと今にして思います。

それに他人と比べてばかりいると、たとえば授業でも変な自尊心が邪魔をして先生に質問するのが億劫になったりするんですよね。「こんな事も知らないなんて思われたくない」みたいな。ああくだらない。フィンランド語のクラスでは私が最年長なので、ときどきそんなくだらない思いが頭をもたげます。歳を取ってからーーとかく過去の成功体験にすがったエゴがあらわになりやすい中高年からーー学ぶ語学ではなおさら、他人と比べないことがきわめて大切なのだと何度も自分に言い聞かせています。

*1:かなり古いデータではありますが「オンライン英会話に関する利用実態調査」という調査がこちらに、また調査対象の母数が100人とやや少ないですが「オンライン英会話をやめた理由」というアンケートがこちらにあります。