インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

お酒から遠く離れて

お酒をやめてから二ヶ月ほどになりました。あれほど毎日飲まずにはいられない生活だったのに、なぜこんなにふっつりとやめることができてしまったのか、自分でもよく分かりません。「もう一生分飲んでしまったから」と自分で自分を納得させていますが、もうひとつ自分の背中を押してくれたのは『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』という本でした。

この本ではきわめて直裁に「お酒は嗜好品ではなく薬物である」と言い切っています。私は正直に申し上げて、こういう物言いはあまり好きではありません。お酒以外にも「砂糖は化学方程式で表される薬」だとか「新型コロナワクチンには死刑にも使われる薬物である塩化カリウムが含まれている」といった、ほとんど陰謀論に近い言説に似ていると思うからです。

https://ja.uncyclopedia.info/wiki/%E7%A0%82%E7%B3%96

砂糖は化学方程式(化学式?)で表される薬だから身体に悪い……などと言い出したら、世にあまたある化学物質すべてが身体に悪いことになるんじゃないでしょうか。塩はNaClだし、水はH2Oです。身体に悪影響を与える化学物質もありますが、そうでないものもある。そうでないものも量によっては悪影響を及ぼすこともある。そういうものですよね。死刑に用いられる塩化カリウムの量と、ワクチンに含まれている微量のそれとを同列で論じるのは鬼面人を威すやりかたです。

ただ、私は上掲の本で「お酒は嗜好品ではなく薬物である」という物言いに接したとき、なぜか反発より「ああそうか」という納得が先に降りてきました。だからといって他人にも「酒や薬物なんだぞ!」と吹聴する気はまったくありませんが、自分のなかでは「じゃあ、やめようか」という行動にすんなり結びついたのです。たぶん以前なら反発が先に来たのでしょうけど、これだかたくさんお酒を飲んできて、しかもそのために体調を崩してほとほと嫌になっていたところに、この物言い。何か小さな引き金になってくれたような気がしています。

お酒をやめてみて、あらためて世の中にはお酒の広告があふれているなと思いました。テレビはもちろん、街頭や電車内の広告も、新聞や雑誌やネットにも、お酒そのものだけではなく、お酒を介した楽しい暮らしのイメージがあふれています。それぞれの広告のシズル感(人の感覚を刺激する感じ)も、当然のことながらとても上手に盛り込まれている。ああ、なるほど、こういうアプローチで来られたら、ついついお酒を飲みたくなるよなあ……と、お酒をやめてからよりその誘惑の手法が分かるようになりました。

もちろん私がお酒をやめたのは純粋に個人の選択としてであり、他人に禁酒をお勧めも強要も一切する気はなく、その点でそれらの広告に反発を感じることはないのです(商品の広告なんだからそうした手法は当然です)が、ただ以前よりもそうした広告の存在とその「仕掛け」に気づくことが多くなったという感じ。お酒に興味がなくなったのなら、お酒の広告にも興味が向かなくなるはずなのに、これはどうしてなのか。まだお酒に未練があるからなのか。よくわかりません。

とりあえず、お酒を飲まなくなってからすこぶる体調がよく、積ん読になっていた本がどんどん減っていくので、今後も飲まない日々を続けようと思っています。

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https://www.irasutoya.com/2016/01/blog-post_982.html