新しい文法項目として、三人称の命令形が出てきました。これまでには二人称の命令形を学んでいます。「命令」するときは、まず多くの場合、向かい合っている「あなた(単数)/あなたたち(複数)」に対して行うわけで、だから二人称なんですね。例えば“lukea(読む)”なら……
肯定形 | 否定形 | |
単数 | Lue!(あなたが)読め! | Älä lue! 読むな! |
複数 | Luekaa!(あなたたちが)読め! | Älkää lukeko! 読むな! |
それから一人称の命令形というのもあるそうです。これは複数のみで、命令というより「〜しようよ」とか「〜しましょう」というニュアンスになります。
肯定形 | 否定形 | |
複数 | Luekaamme!(私たちは)読みましょう! | Älkäämme lukeko!(わたしたちは)読まないでおきましょう! |
「〜しましょう」ということでは、以前に学んだ受動態でも言えるのでした。“Luetaan!(読みましょう!)”。先生によれば、一人称命令形も受動態もまったく同じ意味ですが、どちらかというと受動態のほうが多く使われ、一人称命令形はやや硬い表現になるそうです。
Unohtakaamme tämä asia!
このことを忘れましょう!
「私たちはこのことを忘れる」という普通の文なら“(Me) unohdamme tämän asian.”と主語と動詞が連動していて目的語は対格になりますが、“Unohtakaamme tämä asia!”は主語と動詞が連動しないので目的語が原型に戻っています。ただし否定文では原則通り目的語は分格になります。
Älkäämme unohtako tätä asiaa!
このことを忘れないでおきましょう!
そして三人称の命令形です。私でもあなたでもなく、誰々に命令するというのはなんとなくイメージしにくいですが、要するに話し手と聞き手以外の誰かに「〜させよう」「〜してもらおう」という表現のようですね。作り方は比較的簡単で、二人称複数の命令形でつけていた語尾“kaa/kää”を“koon/köön”にするだけです。これが単数の場合。複数は“koot/kööt”をつけます。否定は“Älköön/Älkööt”。
肯定形 | 否定形 | |
単数 | Lukekoon!(誰々に)読ませよう! | Älköön lukeko! 読ませないようにしよう! |
複数 | Lukekoot!(誰々たちに)読ませよう! | Älkööt lukeko! 読ませないようにしよう! |
参考書にはこんな例文が載っていました。
Minulla on kiire. Käyköön Liisa asemalla.
私は忙しい。リーサに駅に行ってきてもらおう。
Lapset älkööt leikkikö, vaan siivotkoot huoneensa.
子どもたちに遊ぶのをやめさせて、部屋を掃除させよう。
『フィンランド語文法ハンドブック』321ページ
なるほど。先生によると、この三人称命令形は熟語的に使われるものも多いそうです。
Onneksi olkoon!
幸せでいなさい!→おめでとう!
Eläköön Suomi!
フィンランドよ、生きろ!→フィンランド万歳!
それから先生は、フィンランドの歴史家で詩人のアルヴィドソン(Adolf Ivar Arwidsson/1791―1858)の言葉も紹介してくださいました。1809年に、フィンランドが長きにわたったスウェーデンの統治から離れてロシアに併合されたあとの言葉のようです。
Ruotsalaisia emme enää ole, venäläisiksi emme halua tulla, olkaamme siis suomalaisia.
もはやスウェーデン人ではなく、ロシア人にもなりたくない。私たちはフィンランド人になろう。