何気なく録画予約しておいた、NHKの『ヨーロッパ トラムの旅』という番組を見ました。ベルリンのトラム(路面電車)から見える車窓の風景や、沿線の街並みなどが、音楽に乗って淡々と映されていくだけの番組。ナレーションは一切なく、テロップや字幕のたぐいもほとんど出てきません。
これですよ、これ。長年NHKの衛星契約で受信料をぽかすか振り込んできた甲斐がありました。こういう、延々風景が映されていくだけのほとんど「環境ビデオ」みたいな番組は公共放送でなければ実現できません。個人的には音楽も要らなくて、ただただトラムが線路を滑っていく音や雑踏音だけが入っているだけで十分ですが、そこまでぜいたくは申しません。
私は同じNHKの『世界ふれあい街歩き』が大好きで毎回録画しているのですが、あの番組で一番いただけないのは「ナレーションの過剰」です。旅情を味わえるのが番組最大の魅力であるはずなのに、毎回俳優さんやタレントさんなどが芝居がかった大げさなナレーションでその旅情を一色に染め上げてしまうのです。私は本当にこれが残念でしつこくNHKに投書しているものの、一向に変化がありません。粘着質が怖い?……そりゃまあそうですか。
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でもこの『トラムの旅』は、過剰な情報の押しつけがほとんどないので、そのぶん見る側が自由に想像を膨らませ、それぞれの旅情に浸ることができます。素晴らしいです。急いでネットで検索してみたら、主にBS8Kで放送されている番組のよう。そんな高級受像機、うちにはありませんが、時々はBS1や地上波でもやっているみたいです。とりあえず近日中に放送されるものは録画予約しました。今度はフィンランドのヘルシンキ編が登場するので楽しみです。
トラムっていいですよね。都市の中心部への、自動車の流入を抑えることができますし、温室効果ガスの排出も抑制できます。かつては日本でも東京をはじめ様々な都市でトラムが走っていたのに、高度経済成長期に次々に姿を消してしまいました。本当にもったいなかったと思います。路面電車って、その軌道はかなりシンプルにできていて、インフラとしてもとても経済的な交通機関らしいんですけどね。
ヨーロッパの都市でトラムに乗って感じるのは、その快適さとほんの少しの不自由さ。どこにでも停留所があるわけではないから、目的地に最短距離で到達することはできないけれど、その分ゆったりとした時間の流れを感じることができます。都市の中心部が自動車でごった返していて、空き地があればすぐにコインパーキングに変身しちゃうという今の東京都心部のあり方はあまり好きではありません。
東京には現在トラムが二路線だけ残っていて、私はそのうちの一つの沿線に住んでいます。往年の路面電車とはかなり違って、ほとんどが専用線を走るいわゆる「軌道線」というやつですけど、そのこぢんまりした車体とゆったりしたスピードは、別に鉄道オタクでもなんでもない私でも愛着を感じます。
『世界ふれあい街歩き』は時々日本の街編をやっていますけど、『トラムの旅』でも日本のトラムを取り上げてくれるといいですね。