インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

いまどき「嫁探し」だなんて目も当てられない

私は「嫁」という言葉が好きではありません。特に「うちの嫁」とか「嫁にもらう」などといった物言いが大嫌いです。とはいえ、私の周囲にもお連れ合いのことを「嫁」と呼ぶ人は存外多く、かといってそのたびに「その言い方に違和感をお覚えではないですか」などと論戦を挑むのも面倒、かつその勇気もないので、いつも内心忸怩たるものを抱えております。

女性が男性の家に入る、嫁ぐという観念じたいが好きではありません。とはいえ、自分も結婚して籍を入れている。しかもうちの場合は妻が私の姓に変えましたから、世間さまからみれば実質「嫁いでもらった」ことになります。あまりエラソーなことは言えないかもしれません。それでも「嫁」という言葉に染み付いている家父長制的な考え方や男尊女卑の匂い、さらには「うちの嫁」という時に漂う「上から目線」感などもあって、私はこの言葉を使えないなあと思っています。

その意味で、現在議論されている(けれどなかなか進展が見られない)選択的夫婦別姓に賛成ですし、諸外国で実現しつつある、同性婚を含むさまざまな婚姻の形にも賛成です。日本はこの点、政府の動きも、それを支持する人々の観念も本当に遅れていますけど、それでも自治体によっては「パートナーシップ制度」などが生まれつつあります。私はこうした、より多くの人々が自分の生きたいように生きることを後押しする制度の拡充、その動きは止まらないと思いますし、もっと声を上げてそれを加速させるべきだと思っています。

……と、数日前に録画してあったNHKの『チコちゃんに叱られる!』を見ました。妻がこの番組のファンで録画しているのです。番組の中で、チコちゃんの顔のCGを作っている(ここは「大人の事情」で伏せられてますけど)チームが休暇を取れるようにする「働き方改革のコーナー」というのがあって、カラスのキョエちゃんが日本全国を回って「岡村(岡村隆史氏)の嫁探し」をするというのがここのところシリーズになっています。

www4.nhk.or.jp

実際のところは、全国各地の特産物などを紹介するコーナーなのですが、そこに「岡村の嫁探し」という側面をもたせて、笑えるコーナーにしようとしています。キョエちゃんが岡村氏の写真を見せながら、現地にいる女性に片っ端から「この男と結婚してくれませんか」と声をかけ、全員から一様に「ムーリー」と手でバツを作りながら拒否される。それが何度も繰り返され、岡村氏自身の自虐的なコメントが入ってチコちゃんが笑う……。

つまりこのコーナーを作っているNHKのスタッフはこれが「笑い」になると思っているようなのですが、私はちっとも笑えませんでした。この「嫁探し」というのは驚くほど古い感覚だと思います。冒頭に書いた男尊女卑もそうですけど、男女とも「適齢期」になったら結婚すべきという考え方の押し付けによる「結婚しない人、結婚できない人いじり」でもありますし。

キョエちゃんは以前は「岡村の嫁」と言っていたのですが、今回は「岡村のお嫁さん」とややソフトな言い方に変わっていました。NHK内でもいくらか「これはちょっと」という声があったのかもしれません。あるいは投書などが届いているのかも。でも、「嫁」を「お嫁さん」にしたって、根本の古臭い考え方は変わっていません。価値観が多様化した現代に、しかも日本人が普段常識だと思っていながら実はその理由を気づいていない問題に切り込むという番組にして、この旧態依然感はどうしたことでしょうか。

先日キョエちゃんは香川県東かがわ市に行き、様々な女性に声をかけて断られた末に、東かがわ市の「ご当地ヒーロー・てぶくろマン」にまで声をかけます。ところがそばにいた人に「てぶくろマンは男性なんですよ」とたしなめられる……。これなども、ご当地キャラが男性だということで結婚相手にならない、つまり結婚は男女でなされるべきものとの固定観念を無条件で支持しています。これもちょっと痛々しいくらいのあまりにも古い感覚で、めまいがしました。

f:id:QianChong:20200224083017p:plain
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2020104974SC000/?spg=P201800178400000

最近のNHKは、特にその報道はあまりにも政権寄りの恣意的(というより不作為)なものが多く、受信料をきちんと払っている身からすればなんとも腹立たしいです(投書しても「なしのつぶて」ですしね)。それでも「NHKにも心ある職員はいるはず。その人たちを応援しよう」と思って受信料を払い続けています。以前ブログにも書きましたが、言論法・ジャーナリズム研究の山田健太氏が「社会の公共財として、みんなで少しずつ負担して公共的なメディアを支えることで、民主主義の発展に寄与することをめざしている」というのに大いに共感するものでもありますし。

qianchong.hatenablog.com

でも最近の『チコちゃんに叱られる!』、なかでも「働き方改革のコーナー」は本当に興醒めです。同じように感じている方は多いと思いますし、投書や意見なども少なからず届いていると思うんですけど……。どこまでこのコーナーが続くのか、どこでやめるのか、見届けたいです。ヘンな意味で来週の放送が楽しみになってきてしまいました。