インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

「キャンパスから学生を締め出している」をめぐって

衆議院議員細野豪志氏が、Twitterで「リスクを回避する大学の姿勢が、学生の学ぶ機会を奪っている」と主張したことに対し、大学関係者や学生など多くの人から賛否両論の声が上がっています。大まかな事の顛末はこちらのBLOGOSの記事が参考になります。

blogos.com
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私も昨日Twitterでこの議論の推移を眺めていた一人ですが、確かに教職員としての立場からすれば「やりたくてやってるわけじゃない」と言いたくなる気持ちはわかりますし、一方で学生さんがキャンパスで得られるものが損なわれているという意見にも首肯できる部分があります。

というか、この問題はすべてを一緒くたにして「オンライン授業か対面授業か」と語ってもあまり意味がないように思います。大学や専門学校で行われている教育には様々なものがあり、オンライン授業に向くものもあれば、向かないものもあるからです。今年に入って、特に春以降オンライン授業への対応でてんてこ舞いの日々を過ごしてきた私個人の感想としては、少なくとも手を動かす実習系の授業は、やはりオンライン授業ではどうにもならない、というのが正直なところです。

学校当局としては、キャンパスから集団感染が出たらマスコミや地域社会からバッシングされるので、いっそ一律にキャンパスを閉じちゃえということになっちゃいます。少なくともうちの学校の、第一波が来たときの対応はそうした「一斉対応」だったように思います。「とにかく学校は閉鎖だ、だけど授業は続ける、どうやって? それは現場が考えて♡」という感じ。

それに対して現場の私たちも色々と声を上げましたが、学校当局にはあまり届きませんでした。そしてその学校当局にしたって、文科省から具体的な指針や補償などが示されなければ、上述したバッシングも含めてリスクを負いきれません。結局しわ寄せは現場の教職員と学生さんたちに集まる結果に。今回細野氏の発言に多くの教職員が反感を持ったのは、このときの無念とそれが理解されていない無念の相乗効果によるものでしょう。

学校現場はいま夏休みに入っているところが多いと思います(授業時間を取り戻そうと補習を続けているところもあります)が、秋以降の学校のあり方についてはもう少し熟慮と細やかな対応が必要ではないかと思います。上述したように大学や専門学校の現場は千差万別で、授業ごとに大量の学生や教職員が縦横無尽に動き回ります。それはやはり小学校・中学校・高等学校とはかなり異質の現場なのです。

そうした様々な状態に応じて、学校ごと、いや学科ごとにオンライン授業と対面授業を柔軟に組み合わせるべきで、そうしたことを行える体制づくりを夏の間にしておかなければと思います。政府はそのために学校への補助(対面授業のために必要なコスト)を拡充する、マスコミも感染状況を一律にセンセーショナルに報じないなど、社会全体で対策を考えないと。ひとり学校現場が単なる怠慢で学生から学びを奪っている(と取られかねない)ツイートを書いた細野氏は、その点では批判されるべきだと私は思います。

私の職場は実習も多いカリキュラムなので、秋以降は分散登校や時間差通学、教室を増やしてのソーシャルディスタンスの確保など色々知恵を絞らないといけないと思いますし、学校側にも提言していこうと思っています。ともあれ、こういう問題は何もかもを一緒くたにして雑駁に語って、「一斉に施策をどん!」というのがいちばん愚かだと思います。