インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

未来予想なんてムリだった

社会的距離(ソーシャルディスタンス)を取るよう求められています。感染爆発の可能性を少しでも減らすために有効だとのこと。それでも、この方針に完全に従おうと思ったのはごく最近のことでした。私は毎日ブログを書いているので、過去に遡って自分を見つめ直してみると、二月末の段階では「要は感染のピークをどこに持ってくるかの問題で、できることを淡々とやりながら日々の暮らしを続けていくだけ」とかなり楽観的な見方をしていました。自粛ばかりしていたら経済が回らないではないかと。

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それから半月ほどたって、三月の中旬になると「やはり不要不急の外出は避けるべきなのか」という考えに傾いています。欧州での感染爆発が報じられていた頃です。経済が冷え込むことも仕方がなく、いまは感染の拡大を抑えることが何よりも大切なのではないかと。社会的距離という言葉を知ったのもこの頃でした。

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それからさらに半月ほど経って、現在です。私が住んでいる東京都は、感染爆発の一歩手前(あるいはすでにそのステージに入った)と言われていて、オリンピックの延期決定からこちら、報道される感染者数が急激に増え続けています。メインの職場と副業的に担当している職場の授業開始も五月のゴールデンウイーク後まで延期されることが決まり、職員はできるだけ自宅勤務をと言われているのですが、私は自宅にいるとほとんど仕事にならないので、ラッシュ時を避けながら職場まで通勤を繰り返してきました。が、それも今週から禁止になりました。

こうやって振り返ってみると、未来を予想することがどれほど難しいのかというのが分かります。ことにTwitterなどのSNSをのぞいてみると、不確かな未来予測に加えて怨嗟の声と罵詈雑言ばかりが飛び交っていて、とてもじゃないけど冷静な未来予測なんてできない雰囲気です。

情報を得ようとSNS以外のネットや新聞・テレビなどにも接するんですけど、却って心かき乱されて冷静に考えることができなくなるんですね。もとよりSNSとテレビからは距離を取るようにしていますが、この週末はさらにそうした騒がしい情報の嵐から離れて、今後の自分の暮らしがどうなっていくのかを予想してみようと思いました。

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https://www.irasutoya.com/2018/07/blog-post_518.html

感染者数の伸びからすると、少なくとも東京では今後も一定期間はこの数字が増えていくことでしょう。収束がいつになるかは分かりませんが、同じような経過を先にたどっている諸外国の例からすると、数ヶ月単位で社会に大きな影響を与え続けるだろうと考えられます。そうなると、複数の私の職場が現時点で設定している「ゴールデンウイーク開けから始業」というプランはいずれも困難になることが予想されます。

メインの職場は専門学校なので、すでに今年度の学生と昨年度からの学生が在籍しており、授業をしないわけには行きません。しかし学校の授業、それも語学の授業なんて「三密」の最たるものです。そうなるとオンライン授業の導入も検討されるでしょう。ただ、留学生が一律に動画を視聴したり、テレビ会議システムに参加したりできる環境を持っているわけではなく、実現にはハードルが高そうです。

私自身はただでさえ教学以外の雑務(とはいえ大切な業務)に忙殺されているなかで、授業内容に入る以前のお膳立てに、これ以上労力が取られるのはかなりキツイですが、学校から「やれ」と言われたらやるしかありません。とはいえ、これまでの授業とはかなり違う発想が求められることになるんじゃないかと思います。

しかも、そのために学校側から大規模に資金が投じられることはたぶん望めないと思います。最低限のネット環境は整えてくれるでしょうけど、あとは先生方の知恵と工夫でというふうに投げて寄こされるんじゃないかと思います。先般の「布マスク二枚」から見ても、政府からこの方面で援助がくることは到底期待できそうにありませんから、学校側だって苦しい立場にあるのです。

副業的に勤務している別の学校は一学期ごとに更新される社会人向けの授業なので、今のような社会の麻痺が続けば「今期は休講」という選択がなされるかもしれません。ただ、逆にこちらは週に一回程度ですし、学校の母体は株式会社なので、むしろ積極的にオンライン授業に打って出る可能性もあります。というか、この学校ではすでにオンラインでの授業配信も行っていますし。

そうなればこちらも教材や教案にかなりの手を加える必要があるでしょう。そしてそのための金銭的な補填は……やはりほとんどなされないでしょう。学校側は学校側で、そうしたオンライン授業に対応するための設備投資も必要でしょうし。それにこうした学校はそれこそ義務教育でも高等教育でも専修学校でもないので、ますます政府からの支援など得られそうにありません。

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暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病

戦争や革命といった「暴力的な営み」が、人類の「平等」にどう影響を与えてきたのかを考察した、ウォルター・シャイデル氏の大著『暴力と不平等の人類史』には、かつての疫病が人口の減少とそれに伴う様々な職業の担い手の減少をもたらし、それが賃金の上昇につながり結果的に格差が縮まったものの、その効果は限定的だったと記されています。

感染拡大の威力は強い一方で致死率はそれほど高くない今回の新型コロナウイルスの場合、自営業や自由業の担い手が減少することは考えられますが、それが賃金の上昇につながって格差解消に資するとはとても思えません。むしろ社会のあちこちに修復が極めて困難な欠落を生み、その後遺症で経済全体が冷え込み、私たちはかつてないほどの喪失感と低迷を味わうことになるかもしれません。こうした影響は長く日本社会に影を落とし続けるでしょう。

未来の予想なんてできないと書いておきながら、つい予測してしまいました。ここ数週間の予測だって個人的にはまるっきり的外れでしたらから、もうやめておこうと思います。……と、勤務先からメールが入り、ゴールデンウイーク以降も基本的に対面授業は行わないという方針が示されました。つまりオンライン授業不可避、「やれ」ということです。本当に行動が遅い自分を激しく反省しつつ、ちょっと途方に暮れています。