タリンクシリヤラインを紹介してくれた留学生とは別の、もうひとりのスウェーデン留学生にも「ストックホルムでおいしい物といったら何ですか?」と聞いてみました。お答えは「サーモンとかミートボールとかですね」……まあ、そうでしょうねえ。それなら日本のIKEAでも食べられるかなとも思いましたが、いちおう旧市街のガムラスタンにある老舗レストランに行ってきました。
ミートボールにコケモモ(リンゴンベリー)のジャムがついてくるのも北欧ならではです。
くだんの留学生に「ほかに何かこう、ストックホルムならではの『これは食べとけ!』的なものはないですか?」と食い下がると、「そうだ、ケバブがおいしいです」とのお答え。ケバブ? なぜスウェーデンでケバブ? と思いましたが、確かヨーロッパでは移民が持ち込んだ文化の一つとして、とても流行していたはず。じゃんぽ〜る西氏のパリを描いたマンガにも出てきたのを思い出しました。
というわけで、ストックホルムに着いてからネットの情報を渉猟してみると、泊まっている宿から徒歩10分くらいの所に、面白そうなお店がありました。
MOAS(meat on a stick)って、棒に刺した肉? つまりドネルケバブのことかしら? 店名は英語なんですけど、ウェブサイトを見ると説明はスウェーデン語のみ。Google翻訳にかければ何とか分かりますが、何もかもはっきり分からないのがかえって面白そうなので、予約なしで出かけてみることにしました。
間口の狭い小さなお店ですが、人気店らしく満員です。見たところお若い方ばかり。でも運良く空いていた入口脇の席に入れてくれました。
お兄さん、パンツ見えてます。
外見はエド・シーランっぽい店員さんが「メニュー(こちら)はスウェーデン語しかないので英語で説明しますね」と、とても親切です。「左上からチキン、ラムとビーフ、ポーク。それぞれ3種類ずつあって、ひとつめがベーシックなもの。ふたつめがうちの一番人気。野菜は……、ソースは……」とこちらが恐縮するくらい細かく説明してくれました。というわけで、チキンのふたつめにある“VALENCIA”と、ビール(これも味わいを細かく説明してくれました)の“Mazarin”を選びました。スウェーデンのクラフトビールらしいです。
もうひとりの、アンドリュー・ワイルズっぽい店員さんは「こんにちは〜、どういたしまして〜」といくつか日本語を話すので、日本に行ったことがあるんですか? 日本語はどこで? と聞いてみたら、「行ったことはないけど、興味があって日本語を独学でちょっと学んだ」と言っていました。「お客さんに味はいいかどうか聞く時の日本語を教えて」と言うので「おいしいですか?」を教えました。
しばしあって、“VALENCIA”登場。ちょっとたじろぐくらいのボリュームです。周りの若い人たちは、これにサイドメニューのフライドポテトをつけてたりするからすごい。中身がこぼれるのでピタパンが「自立」できるように作られたこの金属のトレーが面白いですね。とてもかぶりつけそうにないので、フォークを頼みました(最初からはついてきません)。
で、お味。いや、これがもう、自分の中にあるドネルケバブの概念が大きく変わるほどの、衝撃のおいしさでした。上品、というわけではないんですけど、脂っこくなくて、いろいろな野菜やハーブやピクルスの味がして、ドレッシングのようなマヨネーズのようなソースが全体に絡んでクリーミー。これは人気になるのもうなずけます。あの店員さんが「おいしいですか?」と聞くので「おいしいです!」と答えました。
このほかストックホルムでは、クリスマスからイースターくらいまでのこの時期にしか食べられない「セムラ」というお菓子も食べました。シュークリームに似たパン生地のお菓子。中にカルダモン風味のペーストが入っています。これもネットで調べて知ったたべもの。スウェーデンの留学生ふたりは、どうも甘党ではなかったみたいですね。