インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

尾声

留学生の通訳クラスで使った教材に、“隨著這個情節發展到了尾聲,真相漸漸地浮出了水面,最後是有一個很大的反轉。(物語がラストへ向かうにつれて、徐々に真相が明らかになり、最後に大きなどんでん返しがあります)”という一節がありました。推理小説について語っている部分です。

この“尾聲”について、「なぜラストや大詰めのことを“尾聲”って言うんです?」と華人留学生のみなさんに聞いてみたら、全員「さあ?」というお答えでした。“尾”はまあ“結尾(ラスト、結び)”の意味だとしても、なぜ“聲(声、音)”なのかは知らないと。

私はこの言葉を、もう何十年も前の留学中の授業で知ったのですが、京劇などの伝統芸能で、演目の一番最後に主に“嗩吶(チャルメラ)”で演奏される特徴的なフレーズがあって、それを“尾聲”といい、そこから派生して物事の最後や大詰め、フィナーレみたいな意味で広く使われるようになった言葉だったはず。

伝統芸能由来の言葉なので、みなさんがあまり知らなかったのも無理はないかもしれません。「芝居」とか「番組」とか「脇役」みたいな、いまでも日常的に使う日本語が実は能や狂言に由来しているというのを私たちがもう知らなくなっている、というのと同じですね。
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