インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

「痴漢動画サイト」に関するBBCの報道を見て

同僚の英語講師に勧められて、BBCのドキュメンタリー番組を見ました。「痴漢動画」を販売する日本と中国のウェブサイトに斬り込んだドキュメンタリーです。


www.youtube.com

BBCでは、先回ご紹介したジャニー喜多川氏による性的虐待を追った《Predator: The Secret Scandal of J-Pop》も報じられたばかりです。どちらの国にも同様の問題はあるでしょうけど、この件といい今回の痴漢動画といい、日本というのはいったいどういう国なのかと思われるだろうなとちょっと暗澹たる気持ちになりました。しかも今回は、在日中国人も関わっていますから「業界関係者」としては、なおさら。こちらに日本での全文スクリプトもあります。

www.bbc.com

先般、留学生の通訳クラス(私が担当しているクラスではなく他のクラスでしたが)で、都心の鉄道に「女性専用車両」があるのは是か非かというディベート課題が出て、留学生間の意見の相違で一時険悪な空気になったことがありました。もちろんディベートですから、これは語学の練習であるという共通認識の上、教室の中だけという範囲を保った上で、自分の思想信条とは違う意見、あるいは社会通念上「それはいかがなものか」と思われる可能性が高い意見を言ってもいいわけです。

それでもこれがあまりにセンシティブなテーマであったためか、一部の学生の間でリアルな反目にまで発展してしまいました。その後担当教師や他の学生たちも協力しながら、険悪な空気は元に戻すことができましたが、あらためてこの問題は日本の私たちの宿痾だなあと思ったのです。日本のマスメディアもこうした件について報道していないわけではありませんが、今回もBBCによって果敢に斬り込まれたことに、かなり恥ずかしい思いがします。

私自身は「女性専用車両」を設けることは、現状を鑑みると仕方がないことだと思います。通勤電車の非人間的な混み具合ももちろんですが、特に日本社会はいまだに男尊女卑がひどく(男女という分け方にもいまや限界を感じますが、一応便宜的に)、女性が圧倒的に不利益を被っているなかで、例えば男性が「女性専用車両は逆差別だ」とか「男性にも主張する権利がある」などと言うのはちょっとおこがましいんじゃないかと。ましてや痴漢などの被害を被っている人の割合は女性が圧倒的に多いのが現状なのですから。

ある程度日本社会において、例えば議員の半数が女性になるとか、そういう状況がきちんと実現するまでは、男性側はかなり譲歩なり抑制なり意識改革なりが必要で、不利益も甘受すべきだと思っています。これを言うと、一部の男性諸氏にはかなり「受け」が悪いですけど、私はそれこそが日本社会のある種の歪みを表していると考えます。それがはしなくも露見しているのが例えばこの「痴漢」問題だと思うのです。BBCスクリプトにはこうあります。

痴漢犯罪はとてもなくなるどころではない。あまりにあちこちで起きる犯罪なので、イギリス政府は日本への渡航者に対して、「通勤列車で女性客が不適切に触られるという報告は頻繁にある」と警告している。カナダ政府も同様に、「混雑した地下鉄や鉄道で、不適切な身体接触が起きる可能性がある」と女性に警告している。

す・ご・く・恥ずかしい。そう思わないでしょうか。