インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

とりあえず先に進む語学

新学期の授業が始まって2週間あまり、今年入学してきた留学生のみなさんに「調子はどうですか」と聞いてみたら、異口同音に「課題や宿題が多くて大変です」というお答えが返ってきました。たしかにうちは専門学校なので、とにかく語学の訓練にめいっぱい力を入れています。月曜日から金曜日まで、午前9時から午後3時までさまざまな授業がみっちり詰まっていますし、選択科目も含めればもっと授業が増えます。

このあたり、大学よりもよほどハードな学習(というか訓練というか)環境かもしれません。2年制のうちの学校を卒業したあと大学の3年次に編入する方も多いのですが、そうした卒業生からはよく「大学の授業がとてもやさしくて拍子抜けした」といった感想が寄せられます。みっちり、ギリギリと訓練に明け暮れるのが果たしていいのかどうかはわかりませんけど、とにもかくにも専門学校ってそういうところなんですよね。

で、私はこの時期、そういった留学生のみなさんに「全方向に頑張りすぎないで」と申し上げることにしています。真面目で向学心に燃えている留学生ほどそうなりがちなのですが、とにかくすべての科目、すべての訓練に最初から全力投球してしまって、5月や6月あたりで失速してしまう方がまま見受けられるのです。

特に語学は、何もかも完璧を目指して積み上げようとしていたら、よほどの耐性がある方でもないかぎり必ずどこかで燃え尽きてしまいます。というか、私見では語学というものは、いろいろと不完全に積み残しながらもとりあえず先に進む、進み続けるというのが習得のためのコツではないかとさえ思えるほどで。

以前にも書いたことがありますが、語学はある時点ではどこか掴みどころがないような気がしつつ、どうにも不完全だなというもやもやした気持ちを抱えつつ、それでも先に進んでいると、ある段階でふっと腑に落ちる、あるいは「じわっ」と染みてくるような感覚を味わうことがあるーーだから初手から完璧を目指そうとしてはいけない……というのが個人的な経験則です。

qianchong.hatenablog.com
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私がかつて講師をしていた語学学校でも、「いえ、私などまだまだ」とおっしゃって、ずっと初中級のクラスにとどまり続けるという方がときどきいました。もちろんその真面目な学習態度に敬意を抱きましたが、その一方で「先に進んでこそ分かってくることもあるんだけどなあ」とも思っていました。

「手を抜け」と言っているわけじゃないんです。でも、すべての課題や宿題に全力投球せず、ある程度の出来栄えで良しとして提出し、また次の課題や宿題に取り組む……それくらいの心構えのほうがけっきょく長続きして、なにがしかの達成を見ることも可能になると思いますよ、と留学生のみなさんには申し上げています。