インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

フィンランド語 180 …フィンランド語が話せるようになるために

ほそぼそと続けているフィンランド語の学習、教室の先生からは教科書のテキストを最後の章から順にすべて暗記するという課題が出され、ここのところずっと取り組んできました。

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それがだいたい定着したところで、こんどは先生からテキストのひとつひとつの文を分析して語ることができるようにしなさいという新たな課題が出されました。

フィンランド語は語形変化が激しい言語で、文法上の要請によって単語が千変万化します(そのぶん英語や中国語ほどには語順に厳しくありません)。文法と、その文法が適用された結果起こる語形変化を駆使しないと話すことができないため、それらを身体にたたき込むために「分析して語る」ことをしようというわけです。

私は、語学に一番大切なのは「素直さ」だと思っているので、さっそく素直に取り組みました。分析のやりかたは、①単語をすべて不定詞(原形・辞書形)に戻す、②品詞や語形変化を説明する、です。

テキスト:Liisa asuu kerrostalossa aivan lähellä keskustaa.
原形:Liisa asua kerrostalo aivan lähellä keskusta
  Liisa 主語、そのまま。
  asua 動詞、語幹はasu、三人称単数形でasuu。
  kerrostalo アパート・マンション、語幹はそのまま、単数内格でtalossa。
  aivan 副詞、変化なし。
  keskusta 街の中心部、語幹はそのまま、単数分格でkeskustaa。
  lähellä「近くに」という副詞、変化なし。lähellä + 分格で、分格の近くに。

できればこれを、誰かに日本語の文章で言ってもらって、すぐにフィンランド語でその文章を言い、口頭で原形に戻し、さらに語形変化などを説明するのです。授業ではクラスメートとともにそれをやっています。しかも、テキストの順番通りにではなく、アトランダムにごちゃまぜで。つまり、脈絡なく文章を言われても、すぐにフィンランド語で話せるようにしようということですね。

これが一通りできるようになったあと、またまた先生から新しい課題が出されました。こんどは、あるひとつの単語を言われたら、その単語が使われているテキストに出てきた文をできるだけ多く言う、というものです。例えばクラスメートから“paljon(たくさん)”と言われたら……

●Silloin monet eivät olleet käyneet esimerkiksi Kanarian saarilla eivätkä ihmiset yleensä tienneet paljon vieraista maista ja maanosista.
●Vaikka Liisa onkin paljon Jussin kanssa, hän ehti olla myös paljon yksin, ja silloin hän tutustui toisiin turisteihin.
●Hän sai Italiassa jäätelöä ilmaiseksi niin paljon kuin halusi.
●Kadulta tulee niin paljon melua ja pölyä, että panen sen mieluummin kiinni, jos sinulla ei ole mitään sitä vastaan.
●Liisalla on paljon hyviä harrastuksia.
●Liisan kirjahyllyssä on paljon mielenkiintoisia kirjoja.
●Minä avasin sen vähän aikaa sitten, kun täällä oli niin paljon tupakansavua.
●Niitä tulee televisiosta aivan liian paljon.

……とすべて口頭で紡ぎ出していくのです。おおお、これはキツい、ムズ(かし)い。

先生からは、これが「達人の域」に達するまでやってくださいとの指令が出ました。たしかに、ひとつの単語からこれだけ展開できれば、かなり話せるようになりそうです。

やっていることは暗記に文法訳読に日文芬(フィンランド語)訳ですから、これはまさに昨今のコミュニケーション重視の語学教育とは真逆の、旧態依然としたメソッドのように見えます。でもフィンランド語は結局のところ、千変万化する語形変化を自分で瞬時にできるようにならなければ話せないので、こうした地道で泥臭い作業を積み重ねなければならない……先生はそう考えておられるように思います。

私はそれに共感します。というか、語学ってもともとこういう地道で泥臭い、なんならそのうえ辛気臭い営みなんですよね。そんなことない? 語学は楽しい営みだ? いや、だから、その地道で泥臭くて辛気臭い営みが楽しいんです。まあ変態ですね。