「現代ビジネス」のウェブサイトで、俳優の大村崑氏が筋トレをされているという記事に接しました。御年88歳。年齢は違うけれど、記事を読んで大村氏のおっしゃることに首肯することしきりでした。私も数年前の、腰痛と肩こりと不定愁訴に喘いでいたあの頃のまま筋トレしないでいたら、たぶん今ごろとんでもない状態になっていたと思います。
でも一方でこの記事、「筋トレにハマりムキムキ」というタイトルに編集氏の無理解が透けて見えるようにも思いました。筋トレは、特に中高年の多くにとってのそれは、ムキムキになるためじゃないんです。少しでも長く自分の身体を自分で支え、自律的に使えるようにするためと、QOL(生活の質)を上げるためなんです。
筋トレには様々な種類(種目?)があって、大村氏も「スクワット」やら「ラットプルダウン」やら「シーテッドロウ」やら「アップライトロウ」やら……様々なものをトレーナーさんと一緒にやっておられます。それらはもちろん、肩を鍛えるとか背中を鍛えるとか、目標とする筋肉が細かく分かれているのですが、実際にやってみると単にその筋肉だけに焦点を当てているわけではなく、個別の筋肉のトレーニングが全身と関わっていることが分かってきます。
例えば大胸筋を鍛える「ベンチプレス」も、継続して取り組んでいると実は大胸筋だけで挙げているわけではなく、身体全体の使い方が洗練されたのちにウェイトの数字も上がるというのが分かってきます。基本的には大胸筋が力を出せるようフォームを細かく指導されますが、それには大胸筋だけでなく、背中や腕やお腹やお尻や、はては足の位置にも注意のポイントが及んでいたりして、すごく奥深い(私も最初は胸なら胸だけに意識を集中させればいいのだと思っていました)。
もちろん正しく筋トレを継続していけば体型も変わってきて、それももちろん楽しいんですけど、それはあくまで副産物……くらいに思っておくのが中高年の筋トレで大切な点ではないかと思います。誰かを圧倒するためでも、エエカッコするためでもない、身体の不調から自分を解放してQOLを上げるための筋トレ。だから「筋トレ」と聞いて真っ先に思い浮かぶ「ムキムキ」とか「ボディビル」みたいなイメージからはだいぶ遠いところにある、というのが実感です。