インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ウイルス側の「戦略」

ジョセフ・ヒース氏の『啓蒙思想2.0』を読んでいたら、とてもタイムリーな記述に出会いました。昨今の新型コロナウイルス感染症を彷彿とさせる記述です(この本の出版自体は2014年)。

私たちがウイルスに対応するべく適応を遂げてきたこと、たとえば免疫系を発達させたことは、ほとんど周知のことだが、ウイルスも私たちに対応して進化してきたことに気づいている人はさほど多くない。(204ページ)

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啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために

ヒース氏によれば、「典型的なインフルエンザウイルスの患者は、発症の一日前から感染性があるようになる」とのこと。つまりウイルスに感染して他の人にもうつすかもしれないというリスクを知らないで人間が仕事や遊びに行くよう、ウイルスが仕向けている、と言って悪ければ、人間にそうさせるよう適応し進化してきたというわけです。

かつて流行したSARSについては、「患者をすぐ体調不良にしすぎたせいで結局自滅してしまった」とも言います。感染してすぐに具合が悪くなれば、人間は病院に行ったり行動を制限したりするので、ウイルスが効率よく自己複製していけないと。なるほど、そう考えると無症状のまま増殖していく潜伏期がかなり長いという今次の「COVID-19」の凶暴性が分かるというものです。

私たちはこの新型コロナウイルスについて、その致死率や発症数ばかりを気にします(死にたくないからマスクに関するパニックも起こるわけです)が、ウイルス側の「戦略」からしたら「思うつぼ」なわけですね。より効率的に増殖したいからあえて致死率を下げて「弱いふり」(ヒース氏)をしている。私たちがより向き合わねばならないのは、その有毒性よりも無症状下での感染性だったわけです。

そう考えれば、いま私たちが「社会的距離を取ろう」としている対策は有効だということになります。しかしこれで今回は乗り切ることができたとしても、ウイルス側はより厄介な「適応」を遂げるかもしれません。実に不愉快な未来予想ではありますが。TBSの『サンデーモーニング』で、司会の関口宏氏は「コロナってのは人を遠ざけるっていう感じがある」とおっしゃっていました。人を遠ざけ、社会を停滞させるのが今回ウイルス側の初期仕様になったのだとしたら、次は潜伏期間をより長くして感染経路をわかりにくくするなどの適応と進化の手を打ってくるかもしれません。

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https://www.irasutoya.com/2020/01/blog-post_265.html