インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

トレーニングを特別なものにしない

「chocoZAP(ちょこざっぷ)」というジムがあります。あのRIZAP(ライザップ)が作った低価格路線の24時間営業ジムで、昨年のサービス開始後1年あまりの間に急成長しているのだそう。先日『BUSINESS INSIDER』にそんな記事が載っていました。

www.businessinsider.jp

私が通っているパーソナルトレーニングのジムでも、これまでにトレーナーさんと「chocoZAP」が話題になったことがありました。そのトレーナーさんは業界のビジネスモデルを研究したいという理由で、自腹で「chocoZAP」の会費を払い、定期的に通っているのだそうです。基本的に、服は着替えずそのままトレーニングしてシャワーなどもなし、トレーニングはマシンやトレッドミルのみ、店員さんはおらず、24時間どの店舗でも利用可能で時間制限なしで、月額税込み3278円。おお、安いです。

店員さんはいませんが、定期的に清掃スタッフが入っているそうで、件のトレーナーさんによると先日は清掃スタッフが作業を終えたあと、そのままマシンでトレーニングをしていたそうです。なるほど、これはアルバイトの清掃スタッフさんの「特典」ということなのかしら。トレーニングをしているアルバイトさんなら、ジムやマシンにも通じているでしょうから、これはうまいやり方だと思います。

上述のような条件で、しかも格安で利用できるのですから、利用者が増えて急成長しているのも当然でしょう。私も、パーソナルトレーニングはけっこうお高いですし、それ以外に早朝利用しているジムも今年は会費が二回も値上がりしたこともあって、「chocoZAP」にも食指が動きかけました。ただ、着替えない・シャワーなし・マシンのみという点で二の足を踏んでいます。

スーツのままレッグプレスなどやったら、お尻から生地が裂けそう。またトレーニングのあとはできればシャワーを浴びたいです。さらに、軌道がほぼ決まっているマシンだと自分が狙ったようにトレーニングできないので、フリーウェイトのコーナーもほしい。でも無人のジムにフリーウェイトを設けるのは少々危険かもしれません。けっこうな重量のダンベルやバーベルが多数置かれていますから、深夜などにひとりでトレーニングしていて万一事故が起こったとしても、誰も助けられないですもんね。


https://www.irasutoya.com/2018/06/blog-post_186.html

上掲の記事では、RIZAPグループの社長さんが「chocoZAP」展開の背景にあるこんな考え方を披露されていました。

ジムでのトレーニングは、着替えを持って店舗に移動し、到着したら靴を履き替えて、せっかく来たからには1時間くらい頑張って、シャワーを浴びてまた着替えて帰る —— という、会費だけでなく、手間という意味でもコストがかかります。運動自体が、正直まだ特別なものだと思うんです。

なるほど、日本でもジムでのトレーニングを欧米なみに「普通のこと」として浸透させたいという思いがあるのですね。確かに、私はきょうもパーソナルトレーニングに行ってきましたが、週末の休日だというのに朝早くから起きて、電車の路線をふたつも乗り継ぎ、駅から徒歩10分くらいかかるジムまで行き、着替えて1時間ほどトレーニングし、終わったらシャワーを浴びてまた着替えて帰ってきました。これで休日の半日くらいが軽く費やされてしまいます。

私はこれが楽しいので、もう5年以上続いていますけど、たしかにこれは手間もコストも時間もかかります。とてもじゃないけど「普通のこと」とは言えません。だから通勤や買物などのちょっとした空き時間でちょこっとだけトレーニングできるという「chocoZAP」がこんなにウケているのでしょう。トレーナーさんによると、「chocoZAP」は立地もすごく考えられていて、とても利用しやすいのだそうです。

コロナ禍の運動不足を背景にトレーニングや筋トレがブームになったと言われていますが、それでも日本ではジムでのトレーニングというとまだまだ「ボディビル」と勘違いされることが多いようです。私の周囲の同僚や知人から「筋トレ=ボディビル」的なとらえ方をされたことは何度もあります。大会に出るの? ポージングするの? ムキムキになってどうするの? ……みたいな。

まあダンベルやバーベルそのものが「ちょっと怖い」イメージですからね。かくいう私も昔はフリースペースのダンベルやバーベルなどが、そしてそれらを使ってトレーニングされている方々が怖かったので、気持ちはとてもよくわかります。その意味でも、トレーニングを特別なもの「ではない」イメージで捉え直す「chocoZAP」のビジネスモデルはとても斬新なものに思えます。