インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

除く日本

6月に入って、大学生などの就活で面接が解禁になったからか、都心では千篇一律の格好をした学生さんと思しきお若い方々が多く見られるようになりました。いわゆるリクルートスーツというあれです。

大きなお世話かもしれませんが、私はこうした方々を街で見かけるたびに、そして自分の職場でもふだんはそれぞれに個性豊かな留学生のみなさんがやはりこうした姿で就活をしているのをみるたびに、なんとも言えない胸の苦しさを感じます。結局私たちは、こんな日本を変えてくることができなかったのだと思い知らされるからです。

一括採用はまだしも、あの型で押したようなリクルートスーツ着用という「風習」がこれだけ長く続く日本。しかも以前よりもスーツの色がより黒に近く、より個性を抑える傾向にあるように私には感じられます。

こうした日本の就活のありようがときに批判され、一部には新機軸を打ち出す企業も出ては来るものの、総体としては「風習」が一向に革まらないところを見ると、これはやはり日本社会とほとんどの日本企業がそれを積極的に支持しているからなんでしょうね。あまりネガティブなことは言いたくないですけど、こんな国に明るい未来はあまり期待できないと思います。


https://www.irasutoya.com/2016/10/blog-post_575.html

つみたてNISAなどをやってらっしゃる方ならご存知かと思いますが、主に長期でリスク分散しながら私のような素人でも比較的安心して運用することができる「インデックスファンド」という商品があります。全世界株式とか全米株式とか、ほかにもさまざまな種類があるのですが、その中に「除く日本」と銘打った商品があり、しかもけっこう人気が高いんですよね。

素人考えですけど、こうしたファンドを選ぶ方はおそらく他にもすでに日本国内の株式に投資などされていて、それであえてインデックスファンドのほうは「除く日本」なのかもしれません。でも分散投資という観点なら日本も含めて全世界に薄く広く網を投げたほうがよさそうなものの、それでも「除く日本」がこうやって商品として成立しているということは、やはりこの国とこの国の企業のありようになかば愛想をつかしている方々が一定数いるということなんじゃないでしょうか。

はてなで人気のブログ『斗比主閲子の姑日記』で斗比主閲子氏が、私のような素人考えではなくきちんとした根拠を示されたうえで「日本株に長期投資する気持ちが萎えた」とおっしゃっています。拝読して、本当にそのとおりだなと思いました。最後に記されているこの部分はとくに同感です。

日本の停滞した経済状況は、何も政治家や経営者が凶悪というわけではなく、日本人が長いこと望んで作り上げてきたものだと私は考えています。私は、PTAでも、職場でも、尖がった人間を尊重するより排除して、集団で責任を曖昧にして合理性の乏しい判断をする"大人たち"をたくさん見てきました。
個々人、そして集団として、こういうあり方を望んできたものですから、私は望まないとしても、結果として日本に住む人たちの多くの人の総意として、今の日本がこうなっているという理解です。
topisyu.hatenablog.com

斗比主閲子氏は「私個人で、多少でも世の中を私の望む姿になるよう、できることはやっていくつもりです」とおっしゃっています。私も同じように私の持ち場でできることをこれからもやっていきたいとは思っていますが、何十年も変わらないリクルートスーツの一群をながめるたび、それが萎えていく気持ちを抑えきれないのです。

ちなみに斗比主閲子氏とは逆に「日本株に投資していい」と主張される経済評論家氏のコラムがこちらにあります。私はあまりにも納得感が低すぎると思いましたが、いかがでしょうか。

toyokeizai.net