インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

教室の風景もさまがわり

きょうは本務校とは別の通訳学校に出講してきました。この学校にはもう十五年以上お世話になっています。私のように元からして三流で、しかも現在では第一線を退いて細々と通訳や翻訳に関わっているだけの人間が講師というのもかなりおこがましいのですが、なんとかここまで続けてくることができました。

コロナ禍に突入してからというもの、この学校の授業はすべてオンラインになりました。今後の見通しはまだはっきりしませんが、この学校の方針としては感染状況が収束してもこのままオンライン授業を継続するようです。

もともと日本国内におけるプロの通訳者の養成は、こうした民間の通訳学校が担ってきました。これは諸外国では主に大学や大学院が担っているのとはかなり異なる状況だそうです。そして民間の通訳学校は東京や大阪などの大都市にしかないため、地方に住んでいる方はなかなか学びにくいというのがコロナ禍前までの状況でした。私がかつて通訳学校に通っていたころは、毎週の授業に合わせて地方から新幹線などで上京してくるクラスメートもいたくらいです。

それがオンライン授業になったおかげで、ずいぶんと門戸が開かれました。私個人はオンライン授業というものがとても苦手(生徒の立場としても、教師の立場としても)ですが、学習や訓練の機会が広く提供されるようになったことはとても良かったと思っています。

この学校では、オンライン授業は基本的にZoomを使っています。ただその他に教材配布や自習室などの機能を盛り込んだ別のウェブサービスを使っており、さらにZoomの通訳機能を使ってかつてのLL教室に似たような環境を作り出しています。さらにさらに私は個人的に単語暗記用にQuizletを用意して生徒さんたちと共有し、さらにさらにさらに授業後は通訳音声の録音を送ってもらってレビューを書く……。

要するに、オンライン授業になって確実に仕事量、というか対応すべき作業の絶対量が増えたということです。もとより、オンライン授業に対応するための教材づくり・教案づくりも、以前の比ではないほど作業量が増えています。でもまあこれは仕方がありません。私は個人で学校側と交渉して、ちょっとだけ時給を上げていただきました。

写真は今日の授業の休憩時間に撮ったものです。Zoomを起動させているメインのモニターの他に、生徒さんたちの顔が見えるようにしてあるサブモニター、左側には通訳機能を使うときのもうひとつのパソコン、右側には私が個人で持ち込んで教案の確認に使っているMacBook。都合4つのスクリーンが並んで、なんだかトレーダーみたいな雰囲気です。

将来的にはオンラインと対面授業のハイブリッドみたいな形に移行していくのかもしれませんが、そうなったら4つのスクリーンに加えてさらに注意を割くべきものが増えるかもしれません。教室の様子を実況するモニターとか。Zoomなどオンライン会議システムも現段階では完全に双方向のLLみたいな機能までは実装できていません(例えば通訳機能使用中に教師側から一対一でコメントを入れるとか)が、それらが実現されたらもはやSF映画みたいな教育環境になるのかもしれません。


https://outraspalavras.net/outrasmidias/como-a-vale-espiona-ativistas-sindicatos-e-criticos/