インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

セサミストリートのハーモニカ

留学生の通訳クラスで日本の「部活動」の話題が出て、ひとしきり話が盛り上がりました。中国語圏の国々では学校によってクラブやサークルみたいなのはあるけれども、日本の「ブカツ(部活動)」とはちょっと違うんじゃないか、いや同じだ、自分はいわゆる「帰宅部」だった……などいろいろな話が出ました。

部活というと私は、中学生の頃に所属していた吹奏楽部を思い出します。もはや何の楽器も演奏できなくなったいまの自分からすると、ちょっと信じられないくらいです。

当時はユーフォニウムという楽器を吹いていましたが、私はひそかに別の「ある楽器」の音色に憧れていました。それは毎週土曜日に見ていた『セサミストリート』のエンディングで流れるテーマソングで使われている楽器です。ネットで探してみたら、当時の音源がありました。番組のクロージングで主旋律を奏でているこの楽器の音色が大好きだったのです。最後に入っていた"Sesame Street is a production of The Children's Television Workshop"という声も懐かしいです。


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当時の私はこの楽器が何であるかを分かっていませんでした。金管楽器っぽくてサキソフォンみたいだけれど、それより音程が高いような気がするのでソプラノサックスかしら……などと想像を膨らませていたのですが、吹奏楽部の顧問をしていた音楽の先生に聞いてみたら「ハーモニカだよ」とのお答え。小学校の頃に音楽の授業で吹いていたハーモニカの音色とは雲泥の相違で、もちろん演奏テクニックも桁違いなので、想像が至らなかったわけです。のちにこうしたハーモニカ(半音階が出せるクロマチックハーモニカ、ですか)がジャズなどで使われているということを知りました。


https://www.irasutoya.com/2015/04/blog-post_12.html

ハーモニカといえば大学生の頃、ユーリズミックスの“There Must Be an Angel (Playing with My Heart)”が大ヒットして、その中で使われているハーモニカの音色にも「やられました」。こちらは言わずと知れたスティーヴィー・ワンダーの名演奏です。セサミストリートのエンディングもそうですけど、こうしたハーモニカの音色って、明るいようでどこか哀しさも帯びていて、個人的にはいつ聞いても懐かしさでうっかり落涙しそうになります。


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1985年に発表された村上春樹氏の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の終盤近くに、「ボブ・ディランって少し聴くとすぐにわかるんです」「ハーモニカがスティーヴィー・ワンダーより下手だから?」というくだりがあります。それくらい当時からスティーヴィー・ワンダー氏はハーモニカの名手として知られていたわけですが、セサミストリートのあのハーモニカも素晴らしい。というわけで改めてどなたが演奏されていたのかを調べてみたら、トゥーツ・シールマンスToots Thielemans)氏だということがわかりました。2016年に他界されていますが、とても有名なハーモニカ奏者だったそうです。存じ上げませんでした〜。

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余談ですが、今回あらためてセサミストリートのことを調べていたら、あの魅力的なマペットたちを生み出したジム・ヘンソン氏は、日本の文楽にヒントを得たと書かれていて驚きました。二人以上の演者がいる一部のマペット文楽のように黒子が操っているんだそうです。本当かしらと裏を取ってみたら、こちらのページにもそんな記述がありました。いわゆる「クロマキー撮影」をする際に「文楽式」の操り方をしていたんですね。

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部活動の話から思い出が次々に蘇って、今さらながらにいろいろなことを知りました。