インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

衣せ牛乳羹

日本文化を学ぶ一環として、留学生のための日本料理講座を毎年開催しています。会席料理をいただきつつ、料理の背景にある文化や和食の作法などについて学ぶという内容です。東京都内には結婚式や法事などのイベントでよく利用される○○荘とか〇〇園といった場所がいくつかありまして、そのうちのひとつに講師の先生による解説つきで食事をする講座をお願いしています。

お酒を飲みながら会席料理をしっかりいただくというわけではないので、料理の品数はやや少なめで、一品あたりの量もそれほど多くありません(もともと会席料理の「盛り」は少なめですよね)。というわけで、留学生のみなさんには「お腹がいっぱいにはならないですからね」とあらかじめ伝えてあります。毎年「量が少なかった」という感想が出るので、予防線を張っておくわけです。おかわりとか追加注文とかもなしですよ、物足りない人は講座が終わったあとにマックやKFCなどに行って「補充」してくださいね、とも。

それはさておき、今年の講座で供される料理のメニューが会場から届きました。前菜・椀盛・造り・焼肴・煮物・食事・止椀・香の物・水菓子……となかなか本格的です。私は別の授業があるので留学生のみなさんに帯同できませんが、担当の先生方がうらやましいです。

そのメニューをもとに、通訳クラスで「もしビジネスランチなどでこういうメニューが出たら、どう通訳するか」というテーマで授業を行ってみました。私も仕事で、料亭やホテルなどのこうした場所で通訳した経験が何度もありますが、和食のメニューは料理や食材の書き方が独特なものも多く、予習していないとけっこう焦ります。例えば前菜は「八寸」とか「口取り」などと記されることもありますし、「占地」がシメジとか、「天豆」がソラマメとか、なかなか難しいです。

今年のメニューで初手から悩んだのがこの「衣せ牛乳羹」です。この「衣せ」はどう読むんでしょう。「きせ」?「かぶせ」や「よせ」だろうかとも思いましたが、そういうふうには普通は読まないでしょうし、辞書やネットで調べても確たるところがわかりません。おそらく日本料理界ではおなじみの表記なのでしょう。それで教師としては情けないことこの上ないですが、留学生のみなさんに「講座の当日に、これはなんと読むのか教わってきてください」とお願いしました。

読み方が判明したら、このエントリに追記したいと思います。

追記

読み方が判明しました。講師の先生にうかがったところ「衣せ」は「よせ」と読むのだそうです。そのすぐ後ろに「サーモンれもん寄せ」があって、これは「寄」を使っているのになぜこちらは「衣」なのかわかりませんが、とにかく先方がそうおっしゃっているのですから、これは「よせ」なのです。