インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

代々木公園と明治神宮

留学生の通訳クラスで、観光ガイド通訳の実習を行いました。毎年東京都庁や東京都議会の見学を兼ねて実習をしていたのですが、あまり見るところがなくておもしろくない(失礼!)のと、コロナ禍で見学できないエリアが多いのとで、今年は代々木公園と明治神宮にしてみました。

観光ガイド通訳は、通訳業務としては比較的タスクの軽い範疇に入るとよく言われますが、背景知識がなければ訳せないことは言うまでもありません。というわけで、教材作成担当の私が下見に行って、ガイド役になってくださる先生方のための原稿を作り、生徒さんのためには専門用語などを網羅したグロッサリー(用語集)を作りました。本来なら通訳者がそれぞれ工夫して予習しながら作るものですけど、今回はまずは観光ガイド通訳を体験してみようという入門編でしたので、いろいろと準備に時間をかけました。

東京にお住まいの方はご存じだと思いますけど、代々木公園も明治神宮も、緑にあふれた広大な敷地で、中に入るとここが都心とは思えないほどの風景が広がっています。特に明治神宮の「御苑」は、入場料がかかることもあって人がさらに少なく、長閑すぎるほどの風景。いまの季節はまだそんなに暑くないですし、とても気持ちがいいです。花菖蒲田(はなしょうぶた)はまだ花が咲いていません(6月頃らしい)ので、ちょっとさびしいですが。

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留学生のみなさんは、楽しんで通訳実習に取り組んでいました。が、明治神宮はかなり神道の宗教的色彩の濃い場所(加えて明治天皇を祀っているという点で近現代史的には微妙)なので、留学生の中には少々抵抗がある人もいるかもしれないなと思いました。というわけで、本殿などの中心施設があるエリアはごくごく簡単に触れるだけにとどめましたし、参拝するもしないも自由ですよと事前に伝えておきました。結果的にはみなさんそこまで宗教性を意識することはなく、日本文化そのものに興味を持ってくださったようでした。

ところで、私は中国語↔日本語の留学生クラスを担当してガイド役をしたのですが、中国語母語のみなさんはすでに日本に数年ほど住んでいる方ばかりなので、中国語がずいぶん「日本語化」しているのが気になりました。共通の漢字があるので、ついつい漢字で表記される日本語の語彙をそのまま中国語の発音で使ってしまうんですね。例えば「工事中(こうじちゅう)」をそのまま“工事中(gōngshìzhōng)”とか。中国語はふつう“施工中”とか“正在施工”ですよね。日本語を知っている華人なら分かってくれるでしょうけど。