インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

料理動画の中毒性

定期的に髪を切ってもらっているヘアサロン、コロナ禍の間はずっとマスク着用を求められていましたが、数ヶ月前から客側は任意となり、先日うかがったらスタッフのみなさんもマスクを外していました。ああ、よかったな〜と思うものの、コロナ禍で変化が起こり、いまだ元に戻っておらず、おそらく今後も戻らないのではないかと思うものがあります。それは「雑誌」です。

以前は髪を切ってもらっている間に読めるようにと、いつも数冊の雑誌が並べられていました。でもこのヘアサロンでは、おそらく不特定多数の客がかわるがわる手にする雑誌は感染予防上よろしくないと判断して、雑誌の提供をやめてしまったのです。妻に聞いたら、妻が通っているヘアサロンではコロナ禍の最中も変わらず雑誌が提供されていたそうですから、これはヘアサロンごとの判断なのでしょう。

で、私が通っているヘアサロンでは、雑誌がなくなる代わりに、小さなタブレット状のモニターが置かれ、動画が配信されるようになりました。タクシーなんかでもよく見かけますが、いわゆるデジタルサイネージというやつです。このヘアサロンでは「BEAURITINISTA TV」という「動く雑誌」が配信されているのですが、コスメ情報とかヘアアレンジとか、あるいはヨガとか表情筋エクササイズとか、私にはあまり興味がない情報ばかりです。まあ仕方がありません。


http://scissors-next.jp/beautinista-tv/

しかしそんな私が唯一引き込まれてしまうのが、料理動画です。手軽に作れるアイデア料理みたいなラインナップで、こうした動画に典型的な、真上からの映像とテロップ、それにタイムラプス的な早送りであっという間に料理が仕上がっていく……これ、例えば材料の切り始めや炒め始めなんかは通常の速度で、そこから先はタイムラプスの瞬速でという映像の繰り返しに、ちょっと中毒性があります。試みに「料理動画 中毒性」で検索してみたら、日経ビジネスの2016年の記事にこんなのがありました。

business.nikkei.com

こうした料理動画、2012年にアメリカはロサンゼルスで登場したTASTEMADE(テイストメイド)や、もともとアメリカのオンラインメディアサイト「Buzzfeed(バズフィード)」のコンテンツだったTasty(テイスティ)あたりがその嚆矢らしいです。映画やドラマでさえ早送りで見る人が多いという現在を、かなり前から先取りしていたかのような映像の作り方。確かに、料理には同じ作業の繰り返しや火が通るまでの時間待ちという要素がつきものであるところ、そこは「ささーっ」と早送りすることで一種のカタルシスを感じるようにできています。

実は私、数年の時間をかけながらSNSからの脱却を実現させてきて、いまではかつて使っていたほとんどのアカウントを削除するに至っています。ただ、削除せず、しかし長らく使っていなかった「Pinterest」を先日就寝前にうっかり開いたら、画面上部に「Watch」というタグがあるのを見つけ、これまたうっかりタップしたら……こうした料理動画的早送り映像の数々が現れて、ついつい引き込まれてしまい、気がついたら1時間くらいそこに浸っていました。

あああ、なんと恐ろしい。デジタルデトックスの難しさをあらためて実感したのでした。