先日、メインの仕事と兼任で受け持っている通訳学校で、春学期末の個人面談を何名かの生徒さんと行いました。この学校ではコロナ禍に突入して移行ずっとオンラインでの授業が行われており、この面談ももちろんオンラインです。
二年半ほどの経験を踏まえて、オンライン授業に関してはかなり否定的な意見を持っている私ですが、この通訳学校に関してはオンライン授業にしたことで生徒さんにとっては大きなメリットがあったと感じています。
ご承知の通り日本における通訳教育は、そのほとんどが民間のこうした通訳学校によって担われており、諸外国では大学や大学院によって担われているのとはかなり状況が異なっています(ここ十年ほどでずいぶん様子は違ってきたそうですが)。そして、通訳学校は基本的に大都市、特に日中中日通訳のそれは、以前であれば東京か大阪か名古屋くらいにしかありませんでした。
ですからそうした都市に住んでいない方は、通訳の訓練を受けたいと思ってもなかなか難しかったのです。かつて私が通っていた頃は、東京の学校に地方都市から毎週新幹線で通ってくるという生徒さんもいたくらいです。
それがコロナ禍を受けてのオンライン授業ヘの移行で、広く門戸が開かれました。日本全国はもちろん、中国大陸や台湾などからだって通うことができるようになったのです。じっさい、今期私が担当したクラスにも、海外から参加されている方が何名かいらっしゃいました。
いまから思い返せば、なぜ民間の通訳学校はコロナ禍になるまでこうしたオンライン授業の可能性に気づかなかったのでしょうね。通信教育による翻訳クラスなどは以前からありましたが、通訳クラスをこんな形で運営することが可能だなんて、どこの学校も考えつかなかったのです。いえいえ、ひとり通訳学校だけじゃないですよね。ありとあらゆる産業が、この可能性にほとんど気づいていなかった。
ただし、上述したように(またこのブログでも繰り返し書いているように)私はオンライン授業による語学訓練についてはかなり否定的です。それでも、オンライン授業のデメリットと、どこに住んでいても通えるようになったというメリットを天秤にかけてみたら……ことこの学校の通訳訓練に関する限り、メリットの方が大きいように感じています。
もちろん私はオンライン授業のあの「場を共有している感覚が欠如している」雰囲気がかなり苦手ですから、コロナ禍が収まったらまた対面授業に戻るといいなと思っています。でも通訳学校側は、オンライン授業でこれだけ「客層」が広がったのに、それをまた狭めるような選択はしないでしょう。通える方は学校の教室に参集し、遠方の方はオンラインで参加し、双方の映像投影して共有しあうといったような「ハイブリッド型」の授業形態が登場してくるかもしれません。