インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

平治物語絵巻(三条殿夜討巻)を見にいく

今年の最高気温を記録しそうな猛暑の中、上野の東京都美術館へ行きました。「ボストン美術館展 芸術✗力」を見るためです。朝9:30から30分刻みの日時指定予約制になっていて、その9:30の回に申し込んでおきました。少しでも来館者が少ない状態で見たいなと思って。

日本美術の名品を多数所蔵していることでも知られるボストン美術館から、今回は「日本にあれば国宝」という触れ込みの*1「吉備大臣入唐絵巻」と「平治物語絵巻(三条殿夜討巻)」が出展されています。空飛ぶ吉備真備がカワイイ「吉備大臣入唐絵巻」も見どころなんですけど……


▲飛行の術を使う吉備真備とその先導をする赤鬼(実は阿倍仲麻呂の霊)吉備大臣入唐絵巻 - Wikipedia

白眉はなんと言っても「平治物語絵巻」。もうこの一点のみを見るだけでも、一般観覧料2000円を払う価値があります。それくらいこの展覧会で飛び抜けて圧倒的な迫力でした。


File:Heiji Monogatari Emaki - Sanjo scroll complete.jpg - Wikimedia Commons

この展覧会には他にもエジプト、欧州、インド、中国その他の絵画や工芸品や宝石類なんかも出展されているんですが、ごめんなさい、それらは全部すっとばして「平治物語絵巻」の展示室に直行し、ためつすがめつ三度鑑賞しました。とにかくものすごく細密で生き生きとした描写なので、視力に自信のない方は老眼鏡ないしはルーペ類必携です。

よくよく鑑賞してみると、メインの題材になっている登場人物たちのほかにも、画面の端々にものすごく人間臭い人たちがいます。特に私は、平治の乱というきわめて血なまぐさい事件の中で、クーデターに巻き込まれたものの、おのれの置かれた状況が今ひとつよくわかっていなさそうなこの公家っぽい青年になんだか親近感を抱いてしまいました。

この武家と思しき青年も、ちょっと腰が引けていそう。

絵巻には残虐な殺され方をする女性も数多く描かれているのですが、この物陰に隠れる女性は助かったのかしら。

そしてひとりだけ、明後日の方向へ走り去るこの青年のその後は……。

実はこの絵巻は、国立国会図書館のデジタルコレクションでも高精細の写真で見ることはできます(写真もそちらからお借りしました)。でも、目の前にある本物の迫力とはまったく比べ物になりません。できれば美術館で、ぜひ。

*1:このあたりの経緯はこちらに詳しいです。