インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

サンナ・マリン氏の対談映像を見て

隣の芝生はとりわけ青く見えるということは知っているつもりです。それでもこういう映像を見ると、彼我の違いにある種の感慨を抱かざるを得ません。

ネットでたまたま見つけたこの映像は、フィンランドのサンナ・マリン首相がジャーナリストのファリード・ザカリア氏と行ったダボス会議での対談です。英語のリスニング力が貧弱な私でも、語られている内容がウクライナ戦争とそれに対するフィンランドの選択、人権やジェンダーの問題などどれも最近の、かつ喫緊の話題なので、理解できる部分が少なからずありました。


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私がこの映像を見て抱いた感慨はさまざまあったのですが、一番最初に抱いた「うちの首相と比べて……」という点については書かないことにします。文化背景、とりわけ社会の成り立ちや周辺諸国との関係や国際社会での立ち位置などがまったく違いますし、言語の面でも英語がなかば公用語とも言えるほど普及しているフィンランドと同列に語るのは酷ですし、私ごときが語るのもおこがましいと思います。

ただ、この対談をされているお二人がこの近距離でもはやマスクをしていないことに興味を持ちました。後ろにいる聴衆も、最後の方で質疑応答に参加している記者と思しきみなさんも、みんなマスクをしていません。おそらくダボス会議では、会議参加前に検査を求め、安全(陰性)が証明された方だけが参加できるというようなルールになっているのだろうと思われます。

それでいいと思うのです。そして、なぜ日本ではいまだにどんな場所でもマスクの着用が求められるのか、いや、大部分の人が自らマスクを手放そうとしないのか、それを改めて考えました。そして「合理的」という言葉が頭に浮かびました。この国ではいまだ合理的な判断を多くの人々がためらっているのだなあと。

現在はコロナの第8波の真っ最中で、死亡者数は過去にないほど高いと報じられており、みなさんますますマスクを手放せないと感じられているのか、都心でもマスクを外している方はかなり少ないです。でも例えば厚労省が発表している週次の年齢別死亡者数でも、その大部分は70代以上のお年寄りなのです。


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もちろん、お年寄りなら亡くなっても仕方がないなどと暴言を吐く気はありません。でも冷静に考えてみれば都心で働いている世代のほとんどはここには入っていないのです。であれば、屋外はもちろんですが、屋内・オフィス内においても、ワクチン接種の履歴なども勘案し、必要に応じて抗原検査キットなども用い、ごくごく近距離の会話ではマスクも用いるといった柔軟で「合理的」な対応がそろそろ行われてもいいはずです。

リスクはリスクとして見極めつつ、もう少し「合理的」な判断を私たちはしてもいいのではないかーーやみくもに怖がっているばかりではなくてーーと思いました。