インタプリタかなくぎ流

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なんだかむず痒さの残るニュース

フィンランドのサンナ・マリン首相に関するニュースが、かの地から遠く離れた日本でも続けざまに報道されていました。珍しいなと思いながら新聞やテレビニュースに接していたものの、私が外野の人間だからか、いまひとつよく分からない騒がれ方だなという印象でした。

news.yahoo.co.jp

伝えられているところによると、マリン首相が知人宅の私的なパーティで大騒ぎしている映像がネットに流れ、その映像で薬物の隠語とも聞こえる言葉が発せられていたことから、薬物使用疑惑が持ち上がり、首相が検査を受けて陰性だったものの、こんどは首相公邸でのパーティで女性客二人が上半身をはだけた写真が流出、首相が会見などを行う際の「FINLAND」と書かれたプレートで胸を隠していたことからまたまた炎上、首相は謝罪……と、いまのところこういう流れです。

で、首相としていかがなものか的な批判がわき起こる一方で、首相だって人間だし息抜きも必要だろう的な擁護の声も上がり、ネットには連帯の意思を示すためにパーティーなどで踊り狂う自分の映像をSNSに投稿する人が続出……というサブストーリーも同時進行中です。

私はフィンランド人の国民性みたいなものをあまりよく知らないので、首相のこういうふるまいがかの国でどういうふうに受け取られるのかについてはよく分かりません。「プライベートであれば、そんなの個人の自由じゃないかな」とは思いますけど。ただ一部の報道では、首相が若くて女性であるという点に議論なり興味なりのベクトルが集中しているような気がして、どうにもむず痒い思いが抜けないでいました。そうしたら、ネットで《DW(ドイツの国際放送Deutsche Welle)》のこの記事を教えていただきました。

www.dw.com

記事によれば、フィンランドでは政治家にとても高い道徳規準を求める傾向があり、そのためにスキャンダルで辞任する政治家も多いとのこと。そして女性の閣僚はさらにそうしたスキャンダルに曝されることが多いのではないかとも伝えています。つまりそこには抜きがたい女性蔑視が潜んでいるのではないかという論旨ですね(英語の読解にあまり自信がないので、たぶん)。

いくらスキャンダルがあっても、いっかな辞任などすることなく、しかもその多くが男性の年寄りばっかりというどこかの国とは、こういう点からして「ああぜんぜん違うんだなあ」と思います。が、それはともかく、私がむず痒く感じていたのはつまりこういうこと(女性蔑視のにおいがする)だったのだな、と思いました。

それからこの記事では、くだんの薬物使用疑惑のもとになった“jauhojengi”(小麦粉ギャング?)という言葉についても説明されていて興味深かったです。いわく、薬物の隠語である“jauho(小麦粉)”ではなく、フィンランドのお酒“jallu(jaloviina)”なのではないかと。さらにフィンランドではこの隠語は使われていないため、これをもって薬物使用を疑うのは無理があるのではないかとも。

ちなみにフィンランドの夕刊紙《Iltalehti》の記事によると、パーティでマリン首相らがダンスに興じていたときの音楽はPetri Nygård(ペトリ・ナイガード)氏とAntti Tuisku(アンティ・トゥイスク)氏の曲だそうです。YouTubeにMVがあったので聞いてみました。

www.iltalehti.fi


www.youtube.com

www.youtube.com

ノリは確かにダンス向きのような気がしますけど、なんだかどっちもけっこう「ヤバめ」の歌詞のような……。特にPetri Nygård氏など、英語のWikipediaによると“He has gained notoriety for his sexually explicit and misogynistic lyrics(性的に露骨で女性差別的な歌詞で悪評を買っている)”のだそう。サンナ・マリン首相へのバッシングには多分にミソジニー的な側面があるのではとされる一方で、そのマリン氏自身はこうした音楽でパリピよろしく盛り上がっていて……う〜ん、よく分からない。むず痒さは持続しそうです。


https://www.irasutoya.com/2016/12/blog-post_165.html