先日読んだ藤野英人氏の『投資家が「お金」よりも大切にしていること』で知ったのですが、ファッション通販のZOZOTOWNを運営しているスタートトゥデイ(現・ZOZO)の社是は「カッコいいこと」なんだそうです。
なんだそれ? とつい脊髄反射で返したくなるほど漠然としていますが、これほど人の自律性を喚起してくれる(それが会社組織なら自律できる社員を育てる)スローガンはないかもしれないと思いました。藤野氏もさまざまなメディアでこの社是のお話を「ネタ」として語られているようで、例えば上掲の本にはこう書かれています。
たとえば、あなたが遅刻したとします。一般的な会社では、「就業規則は守らないといけない」と怒られます。しかし、スタートトゥデイの場合は、「遅刻は、あなたにとってカッコいいことですか?」と聞かれます。(160ページ)
たぶんこれは、昔から使われてきた言葉でいえば「矜持」なのでしょう。あなたは社会人として、あるいはもっと広くひとりの大人として、「矜持」を持っていますかと。人は他人からいくらあれこれ言われてもなかなか変わらないものです(同様に、いくら他人を変えようとしても変えられるものではありません)。
自分が変わるのは結局、自分が自分に問いかけ、自らを変えようとする自律性を発揮するしかない。その自律性を起動させる言葉が「あなたにとってカッコいいことですか?」なのでしょう。
会社とは関係ないけれど、私もこんどスーパーで、棚の奥から少しでも新しいものを取ろうと不自然な体勢で手を伸ばしているおじさんとか、無料のビニール袋を「いーとーまきまき」よろしくごっそり大量に持っていこうとするおばさんとかに遭遇したら、「あなたにとってカッコいいことですか?」と聞いてみようかしら。
でも、そういう方々にはおそらく響かないんですよね、このスローガン。だって「カッコよくありたい」と思う時点でその人はある程度「意識が高い」んですから。そう考えると、スタートトゥデイの社是も、それが響くような人たちが集まっている会社だから力を持つのかもしれません。