インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

靴を放り投げる

毎朝通っているジムで興味深いのは、年齢や性別を問わず、ほとんどの方がご自分の靴を「ぽーん」と放り投げることです。このジムは規模がけっこう大きくて、受付の横にシューズボックスがずらっと並んでおり、利用者はそこで靴を脱いでシューズボックスに入れ、その鍵を持ってロッカールームに向かうようになっています。

逆にトレーニングが終わって帰るときは、そのシューズボックスから自分の靴を出して履くわけですが、そのときに多くの方が靴をぽーんと放ってフロアに落とし、靴を履いて帰って行かれるのです。これ、スニーカーのようなカジュアルな靴だけではなく、ビジネスパーソンとおぼしき方の革靴でも同じです。これが興味深いなあと(観察してしまってごめんなさい)。

いえ、べつにお上品ぶるわけでも、決して育ちがいいわけでもないんですけど、私はこれができなくて、いつもかがんで靴をフロアに置き、履いています。ようするに靴を放ることができないんですね。ジムのみならず、自宅で靴を履くときも同じです。

同僚に聞いたら、もしそれがジムであれば、靴が「あっちゃこっちゃ」向かない程度の高さから、揃えてぽーんと放るかな、と言われました。でもたとえばお高い会席料理を食べに来たとか、そういうシチュエーションだったらかがんで揃えて置くかもしれないと。

マンガ家のじゃんぽ〜る西氏が、お連れ合いのカレン西村氏*1と結婚される前に描いていたマンガで「カレンさんのご自宅での身のこなし」というシーンがありました。その前段で西氏がロシア人のフライトアテンダントの動きが「大きくて雑だと思った」と言ったところ、フランス人の友人トマ氏から……「それはお前が日本人だからそんなことを思うのだ」「俺も日本に1年いたことがあるからそういうことに気がつくようになったがそうでなかったら気づかない」「西欧人は全くそんな事を感じないよ」……と言われるシーンも描かれています。

でもいまや、身のこなしについてはもはや「西欧人」だの「日本人」だのという違いは少なくなってきているのかもしれません。ジムで多くの方が靴を放り投げるのを見て、そんなことを思いました。


▲じゃんぽ〜る西『かかってこいパリ』35ページ

*1:マンガ連載当時は「カレン」さんでしたが、現在は「カリン」さんと表記されているようです。