インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

こんな事態だからこそ熱狂に乗らない

今回のウクライナ情勢に際して『愉快的陳家@倫敦』の id:Marichan さんが「とりあえずできること」として寄付の話を書いておられたのに共感して、私も“Donate”してきました。どこにどれだけ回って、どれくらい役に立つのかは分かりませんけど、お金は天下のまわりものですから。少しでも自分以外のところに環流させることが回り回って自分のためにもなると信じて、なるべくこういう募金はするようにしています。

marichan.hatenablog.com

ところで今回のロシアによる「侵略」、憤ろしい思いでいろいろな情報に接していますが、日本の新聞やテレビなど大手メディアの論調、というか報道のトーンがやや情緒的かつ画一的なのが気になっています。今回の件に限らないのですが、なにかこう善悪をあまりにもきっちりと立て分けして、ゼレンスキー・ウクライナをとにかく英雄的に描き、一方のプーチン・ロシアをとにかく悪の帝国みたいに描く、そんなトーンが伏流しているように感じられるのです。

もちろん私は、今回の「侵略」に理があるとは思いません。政治に翻弄される市井の人々の苦しみについても同情の気持ちを禁じ得ません。それでも、ウクライナにはウクライナの問題があり、ロシアにもロシアの問題があるはず。プーチンを例えばヒトラーになぞらえて溜飲を下げるというようなものではない、もっとこの背景に詳しいさまざまな専門家の分析や見解を徴したいと思います。いまは事態が急速に変化しているので報道もそれを追うことで精一杯なのかもしれないですけど。

ちょっと検索したら、アムネスティのこういう記事がありました。まさに今回の展開の前哨戦になったドネツク・ルガンスク両州における、ウクライナの抱える問題を教えてくれます(もちろんこれだって背景にロシアとの確執があることに変わりはないのですが)。たぶんネットにはもっともっとあるはず。かつてロシア語を学び、現ロシアと旧ソ連の内情に詳しい同僚も「そんなに単純な話じゃないのよ」と私に注意を促してくれました。

www.amnesty.or.jp

こういうときだからこそ、ついファナティックになりがちな自分の感情を抑制しようと思いました。自分の職業柄、今回の事態を中国と台湾になぞらえて語る人も私の周囲に増えそうな気配がありますが、だからこそなおさら冷静に、と思っています。蛇足ですけど、こういうときはSNSにあまり近づかない方がいいですね。