インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

オンライン授業に「うな担」がほしい

昨晩偶然に見たNHK『ガッテン!』の「ビデオ通話の極意」は興味深い番組でした。オンラインの会議や授業が盛り上がらないのは「うなずき」と「身振り手振り」の少なさというお話。なるほど、そうだったのか。

www9.nhk.or.jp

Zoomなどを使ったビデオ会議システムではカメラと画面の位置がズレているため、対話している相手と目線が合いません。目線を合わせようとすればカメラのレンズを見なければならず、カメラのレンズを見ると画面に映っている相手の顔が見えず……ということになるからです。

これはやってみると分かりますが、相手と微妙に視線を外し合っての対話はどことなく不自然なんですよね。お互いに自分に話しかけている、もしくは相手から話しかけられている感じが薄くなる。番組では、これがまずオンライン会議や授業の盛り上がらない理由として挙げられていました。

それを解決するために、画面とカメラのレンズを一つに合わせるシステムも開発中だそうですが、実用化はまだまだ先になりそう。ということで番組がもうひとつ提案していたのが「うなずき」と「身振り手振り」だったのです。通常の対面形式では、目線が合うと自然にうなずいていたものが、視線の合わないオンラインではうなずきが有意に減ると。そして人は相手がうなずいていないと安心できない、自分の言っていることが伝わっていないような気がして、それで全体が盛り下がってしまうというのです。

確かに、私もオンライン授業を続けてきて、学生さんがうなずいてくれたり、何か反応をしてくれるととても「救われた」ような気持ちになります。特に語学の授業では音声が大切なので、学生さんは一律音声をミュートにして、発言するときだけ音声をオンにするようにしています。こうした環境では、学生からの声の反応がない中、私一人が延々語りかけ続けなければなりません。加えてうなずきなどの反応がないと、もう本当につらくなります。

番組では、会議の参加者に「うな担(うなずき担当者)」を入れる、もしくは全員がうなずくことを意識すると、途端に会議が活発になるという実験結果が示されていました。これは興味深い。私も授業で学生さんたちに、積極的にうなずいてもらうようお願いしてみようかな。

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https://www.irasutoya.com/2019/10/blog-post_611.html

もうひとつ、ビデオ通話では胸から上や、人によっては顔だけが映っている場合が多く、これも「盛り下がる」原因とされていました。せめて上半身、胸以上を映し、なおかつ身振り手振りを映すと、通話が活き活きとしだすというのです。番組ではとあるラッパーさんが両腕を組んで動かせないようにすると、途端に言葉を紡ぎ出せる数が減るという実験が紹介されていました。

しかもラップを伝えている相手が全くの無反応だと、これまた言葉が出にくくなると。逆に相手がうなずいてくれたり、リズムに合わせて動いてくれたりすると、とたんにラップが滑らかに。ビデオ通話でも首から上しか映らず、相手のジェスチャーやうなずきなどの身体の反応が見えないと、流暢性や言葉の検索の幅が失われるということなのだそうです。

いや、これは自分の経験に照らしても、とても首肯できる実験結果です。オンライン授業で学生さんの反応があまりに薄いと、こちらもどんどん元気を削がれていくような感覚になります。また通訳しているときも、聴衆がうなずくなどの何かの反応があると、それに勇気をもらって訳出もしやすい。逆に首をかしげられたり、イヤホンを外されたりすると、それだけで強烈なプレッシャーが襲いかかって訳出が乱れます。

いずれも半年以上オンライン授業をやってきて薄々感じていたことですが、様々な実験結果がそれを裏付けていて、とても面白いと思いました。人のコミュニケーションは、単に言葉の音声だけでなく身体全体の反応も大きな役割を果たしているんですね。あと、音声ということではやっぱり、話す人以外全員が音声ミュートというのは、これはもうどうしたって盛り上がらないです。ああ、大量の音声と画像のデータを安定してやりとりできる通信環境がほしい。5Gの普及が待ち遠しいです。