インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

Zoomで顔出しを嫌がる学生さん

コロナ禍の影響で、奉職している複数の学校はいずれもZoomを使ったオンライン授業が続いています。今年の春頃にオンライン授業が始まった時は、一時間ほどパソコンに向き合って授業をしているだけでもぐったりと疲れていましたが、最近はようやく身体が慣れてきたようで、「オンライン授業ならではの身体の使い方」が分かってきたように思います。

ところで、若い学生さんたち、特に留学生の一部には、オンライン授業で絶対に顔を見せない方がまま見られます。自宅から参加しているので「すっぴん」の顔を出したくないということなのかな、とも思いましたが、男女を問わず顔を見せない人はけっこういるんですね。もちろんスマホしか持っていなくて「パケ死」や「ギガ死」が心配なので音声のみで参加しています、という人もいて、これは仕方がないと思うんですけど。

Zoomの映像はミュートにしていないけれど、顔を写さない、つまり首から下だけを写して授業に参加している人もいます。逐次通訳訓練の場合、訳出している時の顔の表情やアイコンタクトなどもけっこう大切だと私は思っているので、できれば顔見せして参加してほしいんですけど、授業の告知時に「できるだけ映像をオンにして参加してください」と書いておいても、毎回顔を隠している人がいます。あれはなぜなんでしょう?

というわけで、昨日は華人留学生の通訳クラスで、顔を出していない数人に「なぜ顔を出さないんですか?」と聞いてみました。そうしたら、お答えは「恥ずかしいから」。う〜ん、ZoomなどWeb会議システムでは画面上にほかの参加者のみならず自分の映像も映るわけですが、その自分の映像を見たくないということなのかしら。よく通訳訓練などで、録音された自分の声を聴くのが恥ずかしいとおっしゃる方はいますが、それと同じような心境なのかな?

しかしですね、これは学校の授業だから許されるかもしれないけれど、仕事でWeb会議システムに参加していて「恥ずかしいから映像をミュートします」などと言えるでしょうか。ほかの参加者は顔出ししているのに、自分だけミュートした画面の後ろに隠れて存在を消すなんて、端的に言って失礼だと思うのですが。

というわけで昨日はちょっと頭にきて「華人社会ではどうだか知らないけれど、日本社会で日本の人々と一緒に働こうと思うなら、そういう態度は受け入れられないだろうし、信用も得られないと思いますよ」とたしなめました。すると、みなさんしぶしぶ顔を出したのですが、それでもカメラから遠く離れて自分を小さく映したり、カメラの半分を紙のようなもので隠したり。どこまでシャイなんだ。

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https://www.irasutoya.com/2018/12/blog-post_25.html

……でもここに至って、私のこういう「たしなめかた」も、世間的にはパワハラとかアカハラとか言われちゃうのかもしれないな、と思いました。日本社会とか日本の人々といっても一様ではないですしね。それに「Zoomではこれこれこうあるべし」みたいな同調圧力や謎ルールがどんどん増えるのも、個人的にはあまり好ましいとは思えません。折しも先日、Zoom会議のホストが参加者の表示順を並べ替えられるという「カスタムギャラリービュー」が実装されて、話題になっていました。

www.msn.com

私はこういう、Zoom会議ですら誰が上座とか上司の画像は大きくとか、ハンコは上司に向かって傾けて押すべしとか、そういう謎ルールが大っ嫌いな人間です。でもその自分が留学生には「Zoomでは顔出しが基本」と強要している。これも「人それぞれ」の自由であるべきなのかな。ただ私は、通訳というのは人と人とのコミュニケーションを仲立ちする職業だと思っています。その職業を目指して訓練している学生さんが、なぜそこまでコミュニケーションに消極的なのかというのが不可解なのですが……。