インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

自然で無理のない身体の使い方

腰痛とはかれこれ数十年来の付き合いです。数年前から体幹レーニングや筋トレを続けてきたおかげで、最近は以前のような深刻な状態に陥ることはなくなりましたが、それでもちょっと油断していると「じんわり」とした腰痛の兆候が現れます。腰が張っているというかダルくなるというか、とにかく「あ、これは腰痛が来そうだな」というのが分かるのです。

そんなときは、とにかく能動的に動くことにしています。よく歩き、ジムに行って積極的に身体を動かす。腰痛は能動的に動くことが大切、つまりマッサージや整体や湿布など「受け身」の方法では腰痛は軽快しないということが分かってきました。そしてまた実際、歩いている時やジムで体を動かしている時はさほど腰痛が気になりません。一番よくないのは座ること、しかも長時間同じ姿勢で座り続けることです。

デスクワークでパソコンを何時間も見つめながら座り続けるなんてのは(私にとっては)最悪で、だから時々立って身体を動かしたり、座るときもバランスボールに座って時折腰を動かすようにしています。ふだん授業をしている時には座ったり立ったり、学生の間を動き回ったり、とにかくいろいろと動くので、特に腰痛は気になりません。ところが昨今のコロナ禍で授業がオンラインになり、そのメリットが失われてしまいました。何時間もずっとパソコンの前に座ったまま授業をする羽目になってしまったのです。

f:id:QianChong:20200903120624p:plain
https://www.irasutoya.com/2014/03/blog-post_2000.html

それで、しばらく影を潜めていた腰痛が最近復活してきました。これはいかんということでパーソナルトレーニングで再び腰痛対策の運動を組み込んでもらっています。ただ、トレーナーさんの見立ては「やっぱり身体の使い方の問題ですね」。つまり立つこと・座ること・歩くこと・運動すること……すべてにおける身体の使い方に癖や偏りがあって、それが腰痛として現れているのではないかということでした。

確かに、体幹レーニングをしていると身体の左右で明らかに可動域が違っていたり、全身を連動させたしなやかな動きがかなりぎこちなかったりします。いろいろな身体の使い方の癖があることに加えて、全身の筋肉がバランスよく発達して連携していないのが腰痛を生む一番の理由ということでしょうか。

そこで、座るときにはスクワットの容量で足の付け根から折り込むように身体を落とし、骨盤に背骨がストンと乗るイメージを意識するようにしています。また不自然に胸を張ったり、肩をそらせたり、おなかを引っ込めすぎたりすることなく、つまり身体に余計な緊張を与えないように意識することも。

実はこれ、能のお稽古で師匠に言われることと驚くほど似ています。能楽師が昔から伝えてきた、強く、美しく、それでいて無理のない身体の使い方は、結局は人間の身体の最も自然な使い方と通底しているのかもしれません。聞いたところによると、武道などでも同じような指導をされるとのこと。いずれも、まことに奥深いことでありますな。