インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

生ハム大好き

最寄り駅から家に帰る途中、住宅街の中に小さな小さなワインバーができているのを見つけました。うっかり看板ごと見逃してしまいそうな狭い間口で、ちょっと入るのに勇気が要ったのですが、ある日妻から「今日は友人と食べてくるから夕飯いらない」とのLINEが入ったので、じゃあってんでそのワインバーに入ってみたんですね。

若いお兄さんが一人で経営していると思しきワインバーでした。席数もすごく少なくて、お客さんは他にいませんでした。私一人なのでボトルを開けるわけにもいかず、グラスワインで何杯か、と思ったのですが、リストに乗っているグラスワインは「それはいま切らしておりまして」というのが多く、結局栓が開いていたうちの一杯を頼みました。

おつまみに「生ハム:800円」というのがあったので注文しました。私は生ハムでワインを飲むのが大好きなのです。泡でも、白でも、赤でも合いますよね。それで楽しみにしていたのですが、果たして出てきた生ハムはプロシュットでもなくハモンセラーノでもなく、「しっとりまろやか」ってパックに書いてあるようなロース生ハムでした。えええ、それ数枚で800円?

いや、カルディで売ってる「生ハム切り落としお徳用パック」みたいなロース生ハムも、あれはあれで好きですけど、この値段だったら……いやいや、この値段だからなのかしら。ワインバーなんて入ったの十年ぶりくらいなので、わかりませんけど。とにかく、がっかりして一杯だけでお勘定してもらって、家に帰りました。

最近知ったんですけど、イタリアの生ハム「プロシュット」には甘いの(ドルチェ)と塩辛いの(サラート)の二種類があるんだそうですね。甘いのと言っても砂糖甘いのではなく、塩分控えめに作ってある種類のものだそうです。有名なプロシュット・ディ・パルマ(Prosciutto di Parma)は甘い方に属するそうで、うん、確かにちょっとお高い生ハムは塩分控えめでその分甘い香りがするように思います。

イタリアはフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州にサン・ダニエーレという町があって、ここの特産品である生ハム、プロシュット・ディ・サン・ダニエーレ(Prosciutto di San Daniele)は、パルマ産よりも高級品なんだそうです。個人的な味覚ですけど、ここの生ハムはより塩分控えめで甘い香りが強いように思います。なにかこう、ナッツみたいな香りがするのです。

週末にしか寄らないお高めスーパー「成城石井」にはこのサン・ダニエーレの生ハムのミニパックが売られていて、これをお酒のおつまみにするのが自分としてはささやかな贅沢です。でも贅沢と言ってもこのパック一つ408円なんですよね。消費税込みで450円。居酒屋やバーに行って飲むことを考えたら、ずいぶんお安いような気がします。

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イタリアの生ハムにはもう一つ、パルマ近くのポー川流域にあるジベッロという村で生産されている、クラテッロ・ディ・ジベッロ (Culatello di Zibello) というのがあって、輪をかけてお高いので私は一度しか食べたことがないんですが、それはまあ美味しいです。この生ハム、中国語の教材に使った動画で知ったのですが、ポー川から昇ってくる霧が生ハムの熟成を手助けして、唯一無二の味わいを作り出すのだとか。

youtu.be

いつかジベッロ村に行って、現地でこの生ハムを食べてみたいです。あと中国は浙江省の金華にも、いつか行ってみたい。言わずとしれた金華ハムの産地です(しかも現地のそれは、広く流通している「金華ハム」とはかなり違うという話を聞いたことがあります)。あ、くだんのワインバーはあれから程なくして閉店してしまいました。いまはサイケデリックなテーブルウェアとお持ち帰りデリカテッセンを販売するという不思議なお店になっています。