インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

人が少ないことを喜んでいいはずなのに

昨日は、とある学校の無料公開講座に出かけてきました。講師として一時間半ほど模擬授業をするんですけど、昨今のご時世を反映して参加された方は通常よりもかなり少なめでした。それでも来てくださる方がいるのですからありがたいことです。ただ、申し込まれた人数の半分しか来校されませんでした。無料公開講座はたいてい、申し込んでも当日お見えにならない方が数割はいるものですが(なにせ無料ですからね)、半分の方が来ないというのはやはり今のこの時期だからなのかもしれません。

学校にお見えになった方はみなさんマスクをしていらして、しかも学校側の配慮で入口には消毒液が置かれ、座る場所もお互いが少しずつ離れるようポツンポツンと。いやこれ、語学の訓練としてはかなりやりにくいシチュエーションです。そういった雰囲気を反映してか、授業もなんだか上滑りな感じがしました。学生さんが無反応というのは常日頃から慣れてはいますが、それでも普段よりいっそう冷え切った雰囲気の中、まるで静まり返った湖水にひとり小石を投げ込み続けるみたいな授業を一時間半も続けるのは少々疲れます。

そんなこんなで仕事を終えて帰宅したら、大相撲ファンの妻が春場所の初日をテレビで見ていました。無観客の場内で行司が呼び出しを行い、懸賞幕が土俵をまわり、力士が立ち会い、まったく歓声のない中勝敗が決まる……。とても冷え冷えとした雰囲気でした。私はもとよりあまりスポーツの試合などに関心がないからいいですが、ファンのみなさんはすごくつまらないでしょうね。実況のアナウンサーや解説者もやりにくそう。特に昨日は、ほとんどなにを喋っているのかご自分でも分かってらっしゃらないと思しき元横綱氏が解説だったので、盛り上がらないこと甚だしかったです(おっと、これは悪口でした)。

私は普段、人が大勢いる場所が苦手で、かつ大勢が何かに対して一斉に盛り上がるというシチュエーションが好きではありません。その意味では、昨今の人気が少なくなった繁華街や観光地などの情況にほっと一息つけるはず。なのにやっぱり人が少ないというのは、特に本来人がいるべき場所に人が少ないというのは、なにか神経を病みそうな「悪しきもの」を含んでいるような気がします。自分でも、まったくもって矛盾しているなと思います。

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