インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

起立・礼・着席

私がいま勤めている学校は、系列の専門学校や大学が都心のキャンパスにまとまった形になっています。同じ建物でもフロアによって学校が違ったりするのですが、先日所用で他のフロアに出向いたところ、ちょうど始業時間で、先生と学生さんたちが「起立・礼・着席」をしていました。

小学校や中学校までなら普通に行われている始業時のあいさつです(かな? 最近の状況は分かりませんが)が、専門学校や大学でもやっているというのは、ちょっとびっくりしました。うちの学校は歴史がけっこう古いのですが、そういう伝統なのかもしれません。ほかの歴史が長い大学や専門学校でも、ひょっとしたらやっているところはあるのかもしれません。

今朝の東京新聞に、小学校の教員で編集者の岡崎勝氏がこのあいさつの話を書かれていました。岡崎氏は小学校の授業でも「起立・礼」などを行わないそうです。授業の始まりと終わりの「けじめ」があれば十分で、岡崎氏にとってはその「けじめ」は時間通りに授業を始め、時間通りに授業を追えることだけであり、それ以外は必要ないのではないかというご意見です。

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私も岡崎氏のご意見に賛成です。自分が授業をするときも同じように「さあ、始めましょう」と言って始め、時間になったら「では、ここまでにします」で終わります。とくに時間通りに始めるのが学生さんに対する礼儀だと思うので、教室に出向く時間に遅れないよう、かなり早くから出勤し、かなり早くから教室に入って準備をしています。昨今のオンライン授業では、手元のスマホの時計で秒針を見ていて、始業時間ぴったりに「さあ、始めましょう」と言うようにしています。

でも逆に言えばそれ以外の礼儀は授業に持ち込まなくてもいいかなと。義務教育段階ならともかく、私が担当しているのは成人が学ぶ学校のクラスばかりですから。授業に遅れてきても何も言わない学生さんもいますが、私はそれをとがめたりもしません。大人になったら自律的に学んでいくのが当たり前ですし、私は「しつけ」を担当しているわけではありませんから。

それから、授業途中で「トイレに行ってもいいですか」と聞いてくる学生さんは多いですが、私はそうやって許可を求めなくてもいいんじゃないかとも思っています。生理的なことですから「ダメ」と言うわけにもいきませんし、「ちょっとトイレに行ってきます」と言って、静かに離席すればいい。もちろん授業前にトイレを済ませておこうなどと意識しないのは、そも学ぶ姿勢としてどうかという意見もあるでしょうけど。

アメリカの学校の状況に詳しい同僚によると、アメリカの学校では小中学校でももちろん「起立・礼・着席」みたいなことはやらないし、終業ベルがなるやいなや、みんなすぐに教室からいなくなってしまうそうです。これは岡崎氏も書かれているように、休み時間をきちんと休む(あるいは教室移動の時間を確保する)のは学生側の権利という意識があるからなんでしょうね。