揚げ物を入れず、白い食材だけで作った「おでん・ド・ブラン」です。
あっさり、淡泊、食べ飽きない味わいでひと冬に何回か作りますが、私のオリジナルではありません。不定期営業で新鮮な素材が入荷したときだけ気の向いた客をおもてなしし、住所・電話・メールは非公表、予約は百年先までうまっている……という謎の割烹「味占郷」亭主(実は「海景」や「劇場」シリーズなどで著名な写真家・杉本博司氏)がその著書で紹介しているものです。
杉本氏は「おでんは出汁が命」と言い、毎朝鰹節を削るそうですから、きっと箸が立つくらいの大量の鰹節で出汁を取って作っているのだと拝察いたしますが、私は安易に「白だし」で、おでん種も近所のスーパーで買った安いものばかりです。それでも十分においしく、かつ上品にできあがるのは、たぶん揚げ物の油が入らないからじゃないかと。
おフランスなお名前のおでんですから、本当はブラン・ド・ブランのシャンパーニュでも合わせたいところですが、予算の都合で安い白ワイン。まあ「汁物・おつゆもの」にワインはあまり合わないので、これでじゅうぶんですよね。
追記
上記の本は、料理本と言うより同名の展覧会に関連して出版された、いわば「展覧会カタログ」です。
千葉市美術館で開催中の「杉本博司 趣味と芸術ー味占郷 今昔三部作」、見応えがありました。なんと場内撮影自由という太っ腹。写真の代表作も素晴らしいけど、私的コレクションを茶室の設えとして構成したパートが面白い。明日までだけど必見です。 pic.twitter.com/9U2JMyTOSv
— 徳久圭 (@QianChong) 2015年12月22日
当時の展覧会評がこちらにありました。
私的に蒐集された骨董と現代的解釈による掛軸、それに須田悦弘氏の精緻な木彫による草木を配した展示は、はっきり言ってお金持ちの道楽でスノッブの極みなんですけど、杉本博司氏の審美眼で選ばれ組み合わされたそれらは、さすがに唸らざるを得ない美の世界。眼福でした。