インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

スーツと鴨南蛮と豆花

昨日の土曜日は、午前中都内某所でお仕事をして、そのあと神田に向かいました。神田に小さな仕立て屋さんがあって、そこでビジネススーツを注文するために予約を入れていたのです。

ここ十年近く、スーツの着用を特に求められない職場で働いてきましたし、もとより気候が温暖化して夏はもちろん、冬だってそれほど着込まなくてよくなったこともあり、以前持っていた何着かのスーツはほとんど処分してしまいました。

たまにスーツを着る必要がある際にはジャケットとパンツ、いわゆるビジネスカジュアル的な格好でしのいできたのですが、最近、一着だけごくごく普通で地味目のスーツの上下を持っていてもいいかなと思うようになりました。セカンドキャリアを模索するために、これからまた面接などに出かける機会も増えるかもしれないと考えて。

この仕立て屋さんはもう何十年も前からお世話になっていて、私はここでスーツやカジュアルのジャケット、冠婚葬祭用の礼服まで作ってもらってきました。いわゆるイージーオーダーというタイプの、採寸あり・仮縫いなしという仕立て方なんですけど、オーダーメイドらしからぬお安さです。少なくともデパートの「メンズ館」みたいなところでブランド物の「吊るし」のスーツを買うよりかなりお得だと思います。

若い頃はスーツのディテールにあれこれ凝っていたこともあるのですが、なんだかもうそういうのが逆に「イタい」お年頃になってきたので、今回は極めてオーソドックスというかシンプルなビジネススーツをお願いしました。

チャコールグレイの生地で、二つボタンにセンターベント、本切羽に四つボタン、ラペル(襟の折り返し部分)の幅もパンツの幅も太すぎず細すぎず、股上も深すぎず浅すぎず。裏地は昨今、極めて派手なプリント柄(例えて言うならエルメスのスカーフみたいな)が流行っているそうなんですけど、これも地味に紺か臙脂で……と言ったら、店員さんが「せめてこれくらいは楽しまれても」と薄いピンクがかった紫色の裏地をおすすめしてくれました。

せっかく神田に来たので、かんだやぶそばで鴨南蛮を食べました。この野趣あふれる味、何年ぶりに食べたかしら。思い返せばその昔、通訳学校の恩師や通訳仲間のみなさんと年に一回浅草の並木藪蕎麦に集まって鴨南蛮を食べる会みたいなのをやっていたのですが、みなさんともだんだん疎遠になってしまって会も雲散霧消してしまいました。なんだかすごく懐かしい気分に襲われました。

食べ終わって「ありがとう存じました」という店員さんの声に送られつつお店を出たら、目の前に台湾豆花のお店があるのに気づきました。小さなテーブル席が二つだけのこぢんまりとしたお店です。鴨南蛮だけじゃまったくお腹がくちくならないので、迷わずお店に入りました。トッピングは六種類あって「全部のせ」もできるそうですが、私は緑豆と白きくらげとはと麦だけで。シロップも温・冷が選べて、何なら氷も足せるそうです。

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店内は台湾のラジオがかかっていて、とても「らしい」雰囲気。豆花も黒糖のシロップが甘すぎず、とても美味しかったです。