インタプリタかなくぎ流

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「そういうとこだよ」と言われそう

今朝の東京新聞に、驚きの記事が載っていました。厚生労働省が発表する統計のひとつ「合計特殊出生率」の対象において、「外国人の女性は計算に入らないのに、国際結婚で生まれた日本人の子は入っている」というのです。

www.tokyo-np.co.jp

合計特殊出生率は「ひとりの女性が一生の間に産むと想定される子どもの数」ですから、分子の子どもに比して分母の女性が低く見積もられることになります。これでは実態を把握しているとは言えず、合計特殊出生率も実態より高めに算出されることになります。

記事によれば、厚労省は計算式を途中で変えれば比較できなくなると説明しているそうですが、各種統計において実情をより正確に反映するため統計の取り方を変更することは普通にあります。もちろんその後の議論の根拠にする際には、いついつに統計手法を変更したという注記がつくことは当然ですが。

統計を時の政権が自らの都合のいいように利用するというのは古今東西、特に専制国家ではよく見られる手法で、例えば私の仕事にも関係の深いかの国などはつとにその統計の確からしさに疑いの目が向けられています。それでも少なくとも現代の民主主義国家において、そうやって政権が統計を恣意的に用いるのは許されないはず。

人口統計学者のエマニュエル・トッド氏をして、その少子化対策の本気度のなさに「どうみても、日本は国力の増強や維持を諦めたのである」「あの国は今日おそらく、世界を征服することよりも、世界から身を引くことを願望している」といわしむる本邦。政策における重要な指標のひとつさえ、こうやってその上振れに見て見ぬふりしているところをみると、トッド氏から「だから、そういうとこだよ」とまた皮肉を言われそうです。


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