新宿の街は、昨日も人であふれていました。緊急事態宣言が発出されているなかゴールデンウィークに入った東京ですが、私の職場はオンラインと対面を組み合わせながら「カレンダー通り」に授業をしていて、昨日は都心に出かけたのですが……いや、すごい人出です。
しかもサザンテラスのあたりでは、カフェのオープンスペースや歩道の脇などにマスクをはずして飲食しつつ歓談する方も大勢。ニュースで見た、ワクチン接種が進んでマスク着用が要らなくなったどこかの国の光景に似ていますが、日本はいま現在のワクチン接種率が約2%。このギャップに戸惑います。
しかし、戸惑いながらも私自身、みなさんの気持ちがよくわかります。みんな「もう、お上の言うことなんか聞くもんか」という感じなんでしょうね。コロナ禍の発生から一年半にもなろうとしているのに、諸外国で奏功した実績がいくつもある「検査と隔離」はろくに行わず、アベノマスクだ、犬と一緒に動画だ、突然の一斉休校だ、五輪延期決定後に緊急事態宣言だ……などという政治を見せられて、そのうえ今でも「まんぼう」だ、聖火リレーしながら緊急事態宣言だ、IOCのバッハ会長来日前に緊急事態宣言の解除を検討だ、医療現場は逼迫しているのに五輪にボランティアで医師や看護師派遣だ……と、かの「インパール作戦」にもなぞらえられる政治が絶賛進行中なんですから。
先日ネットのJBpressに「東京五輪『日本はIOCに開催懇願』の衝撃情報」という記事が載っていました。そのなかにこんな言葉がありました。「五輪を強行開催すれば、財界が喜び、国民も何だかんだ言いながらアスリートたちの熱戦に酔いしれて批判的言動を忘却させ、ひいては自分たちの支持率も大幅回復できる」。政府の要人がこの通りに言ったわけではなく、あくまで五輪組織委員会某幹部の政府評としてですが、おそらく政府の本音なんでしょう。国民をとことんバカにしていますが、でもまあ国民の側にもバカにされるだけの実態もあるんですよね。あまりにも低すぎる投票率とか。
仮に五輪が中止になったとしても、ここまで判断を遅らせて人命を軽んじ、税金を浪費した責任はきっちり追求しなければいけません。でも「中止は英断だ!」という方向に民意が動いて、7月の都議選で小池百合子氏率いる都民ファーストの会が躍進し、そのあと秋の衆院選で菅政権が評価されるような未来がありそうで、今から暗澹たる気持ちです。小池氏など「五輪中止の責任をとって都知事を辞任します」とか言って、それがまた国民の拍手喝采を受けて、衆院選で国政に返り咲き、日本初の女性首相を目指す……なんて方向に行きゃしないでしょうかね。
https://www.irasutoya.com/2018/11/blog-post_489.html
政府が小手先の対策ばかりで本腰を入れないのを見抜いて、緊急事態宣言下でも「自分の判断で行動させてもらうぜ」とばかりに繁華街へ繰り出している国民には、ある意味したたかで健全なものも感じます。でも、その一方で選挙権という一番基本的な権利すら行使せず、ひたすらいいように税金をむしり取られて浪費されるのもまたその国民なんですよね。
なんだかんだいって、いまはまだ日本はとても豊かな国なのだと思います。だからまだこんな「狂想曲」を奏でていられる余裕があるんでしょう。私自身は五輪の開催なんてとても無理、とんでもない、と思っていますが、世界の中ではまだまだ豊かなこの国は、インパール作戦を完遂してしまうかもしれません。完遂すれば国民は熱狂し、逆に中止しても国民は熱狂するでしょうか。「お上の言うことなんか聞くもんか」と行動しはじめた国民が、同時にそんな熱狂にいとも簡単にはまるとしたら……そんな日本国民(自分も含め)をどう捉えたらいいのか、いまのところ私には分かりません。