インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

日本の「空気」はメダルラッシュで一変するだろうか

かの「インパール作戦」にも準えられる今次の東京五輪、日本政府と東京都は何が何でも強行するつもりのようで、いよいよ「本土決戦」の様相を呈してきました。そんな中、ライター・編集者の中川淳一郎氏が『PRESIDENT Online』に書かれた記事がSNSで「炎上」していました。
president.jp

日本がメダルラッシュともなれば、世間のムードは簡単に変わる。テレビでは、日本人選手が金メダルを獲得するたびに速報が出て、その夜のニュース番組のスポーツコーナーで選手を称える映像が大量に流れるだろう。スタジオのキャスターや解説者は大興奮。選手も生中継のインタビューで番組から番組をハシゴし、ツイッターは喜びと祝福の声だらけになる。

うん、たぶんそうなると思います。中川淳一郎氏のこの記事自体は首肯できないところもたくさんありますけど、私はこれまでに中川氏の著書をいくつか読んでいて、氏の主張には共感するところもたくさんあります。というか、この記事自体が氏一流の「ネタ」じゃないかな(特にマスメディア批判)と私は思いましたが、ともあれ五輪が強行開催されたら、国内の「空気」がガラッと変わるだろうことは容易に想像できます。

そして、そうなったあかつきには、それまで反対を唱えていた、例えば私のような人間は「ぐぬぬ……」とばかりに様々な罵詈雑言を考え出してはぶつけて溜飲を下げようとする、あまつさえ「これで感染爆発が起こってくれたらいいのに」などと、自分の主張の正当性を裏付ける担保として本末転倒な展開を期待しちゃったりする心性に陥りかねない……という指摘にも「そうかもしれない」と思います。

もちろん私は、もとよりスポーツとか体育というものが大嫌いな人間ですから(身体を動かすのは好きですが)、これまでも、そして今回も、五輪競技やメダル数の多寡に狂喜乱舞することは一切ありません。それでもこの夏、少なからぬ人たちが(それも自分の身近な人たちもが)様々な問題を一顧だにすることなくなだれを打って熱狂するだろうことを想像するだけで、なんとも暗い気持ちになります。

そんな私の気持ちを見透かすように、中川氏は記事の最後をこう締めくくっています。

高確率で期待できる日本人選手の金メダルラッシュは、「とにかく悪い材料を探す」ことに躍起になってきた「コロナ、ヤバ過ぎ」派の日常をぶち壊してくれる可能性がある。それでも世間の風が変わらなかったら、いよいよ日本人の集団ヒステリーも末期症状。閉塞感に包まれた暮らしが、これから何年も続くことになるだろう。

お言葉ですが、私はこれは楽観的にすぎると思います。数週間程度の五輪で、この「同調圧力」大好きな私たちの心性は変わらないのではないでしょうか。メダルラッシュでわっと沸いたあとにはすぐ、また「ヤバすぎ」の日常にわっと戻るでしょう。そこに万一、五輪に起因する感染爆発でも起きた日には、それこそ「閉塞感に包まれた暮らしが、これから何年も続くことになる」と思います。というか、これも中川氏は分かっててあえて書いてるんでしょうけどね。

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https://www.irasutoya.com/2014/11/blog-post_175.html