インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

キャッチーでダンサブルなナンバー

YouTubeでお笑い芸人さんの芸を見るのが好きです。テレビのお笑い番組も昔は大好きだったんですけど、最近はほとんど見なくなりました。当たり前かもしれませんが、テレビという媒体は基本的に老若男女を受け手に想定しているからか、そのぶん「大味」な感じがするんですよね。その点、YouTubeで様々な芸人さんが公開している動画には、実験的な、あるいは革新的な試みがたくさん見つかります。

お笑いというのは「話芸」ですから、私は芸人さんたちの「話」や「しゃべり」の技術に特に魅了されます。だから逆にお笑い芸であっても、それが奇矯な行動に重点が置かれているものは、あまり好みじゃありません。奇声を発したり、奇妙な動きをしたりで笑いを誘うよりも、話芸そのもので笑えるほうが、後々までじわじわとその面白みが持続するような気がします。

先日たまたま見て面白いなあと思ったのは、ジャルジャルのコントです。コントというか、zoom会議におけるビジネスパーソンの会話をそのまま流したという体のとても「いまふう」な作品で、全体で20分もあります。こういう形で動画サイトならではのお笑い作品を作っているというのもニクいですよね(テレビでは絶対にできない形態と長さです)。


www.youtube.com

移動体通信業界と思しき会社のzoomミーティングで、入社四年目の江良(えら)と入社三年目の井張(いばり)の二人が、入社一年目の朝倉に対して「えら」そうに「いばり」、先輩風を吹かせているところに、客先の福村が登場し、こんな感じでまくし立てます。

今回新しいスマートフォンのアライアンス事業をコンセンサスするというのは業界の成長にとってマストだと思うのでシナジー効果を期待しております。これからスマートフォンマーケティング市場というのはどんどん拡大していくと思うので、バジェットはどんどん超えてKGIを気にせずにKPIにインポータンスを置いて、最終的にリコールを見据えているレベルになっててももういいのかなというのがこちらのオピニオンですね。

わははは、お笑いですからもちろん誇張されていますけど、いかにもいそうです、こういう「ギョーカイ」っぽい話し方をする人。私も通訳現場で一度だけ「このアーティストのニューアルバムはキャッチーでダンサブルなナンバーがコレクトされたコンピレーションで……」みたいに話す方に遭遇したことがあります。そんなカタカナ語満載のマシンガントークに対して江良と井張が圧倒されている中、「しょぼい奴」だと思っていた朝倉が話し出すと……。

f:id:QianChong:20210429154137p:plain

これ以上はネタバレになりますから、実際に動画を見ていただきたいと思いますが、ほぼ話芸だけで、しかも基本的にはビジネス現場の言葉だけでこれだけの面白み。脚本を書いた方は頭がいいなあと思います。しかも福村と朝倉を演じたお二人は素人さん(セミプロと言うべきか)なんですって。ジャルジャルのお二人はぐっと後ろに引きつつも、笑いの度合いをさらに高める演技をしているのがまた素晴らしいと思いました。日本人の外語コンプレックスも、このお笑いのツボとしてうまく機能しているんでしょうね。

ジャルジャルのお二人にはかつて「フィリピン語で数学数える奴」というコントがあって、これも「通訳」をネタにした面白い(そしてある意味怖い)作品です。


www.youtube.com

私はYouTubeでこういう通訳に関するお笑い芸を見つけるたびにコレクションして学生さんに見てもらっています。「反面教師」になるからです。お笑い芸人さんが通訳者をネタにするということは、しかもそれで笑いを取ることができるということは、世間の方々の「ああ、通訳者ってそうだよね」という「あるある」的コンセンサスがリフレクトされているからではないかというのが私のオピニオンです。