インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

AIに出張報告書を生成させてみた

先日出かけてきた一泊二日の校外研修、教職員の我々は「出張報告書」というものを書かなければなりません。日時や目的地などの情報は当然ですが、その他に研修の結果どのような成果が得られたのかについて文章で報告を求められます。

うちの職場には、法人全体で使用しているERP(Enterprise Resources Planning )システムがあって、イントラネットから報告書の提出や交通費の精算などをこのシステムで行います。ふつう企業や法人がERPを導入する目的は情報の一元管理であり、ITを利用して業務の効率化を図ることにあると個人的には理解していますが、うちの職場の場合はこのシステムで提出したあとにその内容をプリントアウトし、捺印して、管理部門まで足を運んで手渡しする……という謎の「慣習」があります。システムを導入したばかりの頃であれば過渡期なので仕方がないかなとも思いますが、うちはもう何年もこれが変わっていません。変える気はないということなのでしょう。

それはともかく、その出張報告書の文章を書いて提出したあとにふと、ああ、これをAIに書いてもらったらどうだろうというよこしまな考えが頭をよぎりました。

教師として留学生を引率して一泊二日の校外研修にでかけました。その報告書を書きたいと思います。行き先は箱根です。300字程度で報告を書いてください。

で、OpenAIのChatGPTが生成した文章がこちらです。

校外研修報告書
私たちは教師として、留学生を引率し、一泊二日の校外研修に箱根へと出かけました。箱根は美しい自然環境と温泉が魅力のある場所であり、学生たちはこの機会を通じて日本の文化と風景を体験することができました。
初日は箱根の有名な観光地である芦ノ湖を訪れました。湖畔の散策をしながら、美しい景色と新鮮な空気を楽しみました。また、船に乗り込んで湖上からの景色を満喫しました。学生たちは興奮しながら写真を撮り、思い出を作っていました。
翌日は箱根の温泉街を巡りました。温泉は日本の伝統的な文化であり、学生たちは温泉の効能や入浴のマナーについて学びました。温泉街の中には美味しい地元料理を楽しめる飲食店も多くあり、学生たちは地元の味を堪能しました。
この研修では、留学生たちは日本の文化や風景を身近に感じることができ、また異文化交流の機会を得ることができました。彼らの日本語の能力向上にも寄与する貴重な経験となりました。今後もさまざまな校外研修を通じて、学生たちの成長と交流を促進していきたいと思います。
以上、箱根での校外研修報告でした。

うおお、私が書いた報告よりもずっと整った内容です。もちろん、私たちは芦ノ湖で船には乗っていませんし、温泉の効能や入浴のマナーについても学んではいないのですが、そういう部分を「ちょちょい」と直せば、じゅうぶんに報告として通用しそう。あっ、もちろん私はこれを報告書に使ったわけではありませんよ。本当に自分の頭で考えて、書いて、提出したのです。信じて〜。

先般、地方自治体でChatGPTを業務に活用する動きが広がりつつあるという記事を読んだことがあります。たしかに官庁関係のお仕事にまま見られるブルシットジョブ、例えば誰も読まないような報告書作成等に力を注がなくていいという意味では、職員にとっても福音かもしれません……といったら皮肉がすぎるでしょうか。

xtech.nikkei.com

私は今回、試みにChatGPTに出張報告書を生成してもらって改めて、ああ、これを使い続けたら自分はもう自分で文章を書けなくなる、ただでさえ頭が悪いのにさらにバカまで一直線になっちゃう……と危機感を抱きましたが、これから先、こうやって生成された文章が世の中に増えていくことはおそらく不可避なのでしょう。

自分の頭で文章を書きたくない人間と、意味は考えずにただ言葉の並びの統計に従って文章を生成するAI。両者が結託して、誰も読まぬ言葉ばかりが紡ぎ出され、増殖していく未来。なんとシュールで気味の悪い未来だろうかと思います。


https://www.irasutoya.com/2016/12/blog-post_146.html