今週職場では留学生が「東京国立博物館」に行って見学するというイベントが控えておりまして、この週末は下見に行って参りました。うちの学校は同博物館の「キャンパスメンバーズ」制度に参加しているので、総合文化展(常設展)は無料で見学することができるのです。
私はこの博物館が大好きで、学生時代からたびたび訪れてきました。常設展とはいえ膨大な収蔵物を誇る東京国立博物館のこと、しょっちゅう展示替えが行われるので何度行っても楽しいです。今回は中村芳中の屏風絵『許由巣父・蝦蟇鉄拐図』に見とれて、しばし佇んでしまいました。いいなあ……おっと、仕事しなきゃ。
image: TNM Image Archives
ところで、見学の途中でお手洗いを利用したのですが、そこでこんな掲示物を見かけて思わずのけぞりました。「ウォシュレット」の使い方が日本語と英語で書かれていて、外国人観光客のために掲示しているのだと(温水洗浄便座の使い方に慣れてらっしゃらない方もいるからと)思われます。
でも、はたしてこれを見て(読んで)ああ使い方が詳しく書かれていて助かった、さすが日本の「おもてなし」は素晴らしいなあと思う方がどれくらいいらっしゃるでしょうか。日本語母語話者の私でさえ、読むことを放棄してしまいました。それでなくても「切羽詰まってる」んですし。
もちろん掲示した方の善意を疑うものではありません*1。できるだけ詳細に、包み隠さず伝えようとするのは良いことなのかもしれません。ただ私はこうした事象に出くわすたび、私たち日本人は(主語が大きいですか)まだまだ異文化コミュニケーションや、多言語環境におけるコミュニケーションのあり方について、何か本質的なところをつかみ切れていないように思えてしまいます。
何年か前に、都営大江戸線のPASMO売場で困惑されている外国人観光客のご夫婦をお手伝いしたことがありました。その時も、親切で便利で多機能なのだけれども、それが結局コミュニケーションの不全をもたらしていることに気づきました。コロナが収まればまたインバウンドも復活してくるでしょうけど、ここいらでもう一度日本流「おもてなし」の独善さ(あえてこの言葉を使います)を検証・反省してみるべきだと思います。
https://www.pasmo.co.jp/visitors/en/area/pdf/all.pdf
qianchong.hatenablog.com
*1:いや、疑ってもいいかな。だって、このウォシュレットの説明、左半分は「節電モード」の説明で、これは使用者向けというより管理者向けです。それも確認せず、とにかく貼っとけ、こういう説明がなかったという苦情が来ちゃ困るから……という態度は単なる怠慢で、もてなす気などさらさらないということではありませんか。