インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

鉛筆を数十年ぶりに削る

今日は朝から東京は上野公園にある東京国立博物館へ出かけてきました。留学生の通訳クラスで実習を行うためです。本館の「総合文化展」(常設展)で、日本美術の歴史を追いながら日本語での解説を英語や中国語に通訳するというものです。日本語でのガイド役は我々講師が引き受け、留学生のみなさんはメモをとりながら通訳していきます。

実習に備えて先週から予習や下調べ、リハーサルなどを行ってきたので、おおむねみなさん素晴らしい出来でした。だいたい日本に住んでいる我々だってよく理解しているとは言いがたい「わび・さび」だの「蒔絵」だの「障壁画」だの「太刀と刀の違い」だのを英語や中国語で解説していくのですからけっこう難しいです。もちろんガイド役のこちらだって勉強が必要ですけど。

今日は無料公開日だったのでお客さんもたくさん入っていて、そのぶん少々ざわざわした雰囲気だったので、こちらもあまり気兼ねなく見学と通訳を行うことができました。あまりに閑散とした静かすぎる雰囲気だと、声を出して通訳するのもはばかられるかなとちょっと心配だったのです。

もちろん私たちも周りの迷惑にならないように、パナガイドを使って小声でガイドし、学生もややローテンションの声で訳すなどあらかじめ気をつかっていました。もちろん別に「悪いこと」をしているわけではなく、博物館本来の存在意義にそった日本文化の勉強をしているのですからやましいところは何もないのです。ただ、下見のときに東京国立博物館はスタッフの方の監視がけっこう厳しいなあいう印象でしたので、こちらも気を遣いまくりました。とにかく特に何も注意されず無事に実習を終えることができたのでホッとしています。

下見のときに注意されたのは「館内でボールペンを使ってはいけない」という点でした。私がメモをとっていたら注意され、ゴルフのスコアを書くときに使うみたいなプラスチックの棒に鉛筆の芯がついたようなのを渡されました。あとから博物館のウェブサイトを見たら「展示品を汚損する可能性のあるボールペン・万年筆・毛筆・シャープペンシルなどの使用はご遠慮願います」と書いてありました。東京国立博物館の展示物は、そのほとんどがガラスケースに入っていますから、ちょっと厳しすぎるような気もしますけど、まあしかたがありません。

というわけで、今回の実習のために学生全員分の鉛筆を用意しました。しかも芯が折れたときのことを考えてひとりあたり2本も。ふだん鉛筆なんてまったく使わないので困ったなと思っていたら、他の研究室の文具置き場になぜか使いかけの鉛筆がごっそり保存されていたのでそれを拝借することができました。電動鉛筆削り機も借りてきて、すべての鉛筆をきれいに削りました。

鉛筆を削ったのって、何十年ぶりでしょうか。たぶん大学生の時にデッサンで大量の鉛筆を使っていたあの頃以来じゃないかしら。当時はすべて小刀で削っていました。試しに今回も何本かカッターナイフで削ってみましたが、削り方がずいぶん下手になっていました。