インタプリタかなくぎ流

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真面目な留学生ほど体調を崩している

コロナ禍が二年を超え、この先もまだしばらくは窮屈な生活が続きそうな気配です。そんななか、職場で相対している外国人留学生のみなさんの中に、体調を崩す人が次々に出ています。

そりゃそうですよね、慣れない外国に暮らしていて、なおかつコロナ禍で身も心も不自由な生活を強いられており、さらに本業である学業も半分以上がオンライン授業や遠隔授業になって、孤独な学びを強いられている……中国語に“水土不合(shuǐtǔ bùhé)”という言葉がありますけど、風土のまったく違う場所に暮らすだけでも大変な人は大変なんです。

私も日本にいるときは年中風邪ひとつひかないのに、留学しているときはしょっちゅう体調を崩して寝込んでいました。私はけっこう「ずぼら」な性格で、身体はどちらかといえば頑健なほうですが、それでも水と土が合わないとああなっちゃう。ましてやもっと繊細で真面目な方だったら(そして最近はそういう留学生が多いように思います)、いまのこの状況はとても辛いのではないかと思います。

前にも書いたことがありますが、オンライン授業や遠隔授業は、ひとりひとりの学生にかなりの「自己管理」を求めます。従来の学校に登校してきて教室に集う形の授業であれば、毎日カリキュラムが決まっていて、授業は基本そのカリキュラム内に配された時間内でどんどん終了していきます。何を当たり前のことを言っているんだ、それはオンライン授業にしたって同じだろうと言われそうですが、それがけっこう違うのです。

もちろんオンライン授業のやり方にもよります。対面授業とまったく同じように時間を区切って授業が切り替わっていくならまだいいのですが、授業によっては課題の教材を配信していついつまでに提出という形を取るものもあります。私見ではここに落とし穴があって、この方式では、真面目な学生ほど「頑張りすぎてしまう」のです。

対面授業ではその授業時間が終われば「はい提出して」と課題を強制的に集めることもできます。学生自身は不本意でも、とにかくその時間内に課題は終わることが多い。ところがオンラインの課題配信型だと、真面目な学生は時間配分度外視でとことん取り組んでしまうのです。まわりにクラスメートがいないので、全体の進捗具合を肌で感じることもなく、ひたすらに集中しすぎてしまう。自分ひとりであっても「これはもうここまで」と自分で自分を管理することができればいいのですが、真面目な学生ほどそういうのが苦手な(というか、潔しとしない)のかもしれません。

そうやって加減を知らずにとことん自分を追い詰めてしまうタイプの学生が、コロナ禍が長引くにつれて増えているように感じられます。自分の学習時間は本来自分で管理すべきものですし、逆に教師があれこれ指図するのも問題だとは思いますが、ことここに至っては多少の介入が必要ではないかと考えています。急ぎ同僚と相談しなければと思っているところです。

かつてフリーランスの在宅で翻訳業務をしていたころ、体調を崩しがちだったことを思い出しました。朝から晩までオン/オフの切り替えをきちんと考えることもなく、ひたすら翻訳に没頭し、締め切りギリギリまで推敲を重ねる……いまから思えば、課題型のオンライン授業で体調を崩している留学生諸君と同じような状況だったのかもしれません。私も自己管理ができていなかったのです。

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