インタプリタかなくぎ流

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オンライン授業で悩む学生への対応

オンライン授業と対面授業の違いについて、このブログでもいろいろと書いてきました。半年間オンライン授業をやってみて分かったもう一つの問題点は、こうした授業形態に適応できない学生が一定程度いることです。オンライン授業、あるいは遠隔授業はある程度学生自身の「自律性」ないしは「自己管理力」みたいなものが必要で、そうしたものを備えていなかったり、極端に苦手だったりする学生がいるのです。

毎日学校に通っていれば、始業時間があり、時間割があり、教職員からの直接的な「管理」が行われます。管理というと何やら強面な言葉ですが、要するに自分で自分を律する手間がかなり省けるのです。例えば課題を出されたら、その授業時間中にこなさなければなりません。こなさなければならないというのは一種のプレッシャーですけど、逆に言えば自分でそのプレッシャーをかける必要はないわけです。教師に「はい、時間だから提出して〜」と言われたら出す、とある意味身を委ねることができる。

もちろんオンライン授業や遠隔授業でも、課題提出のしめきりが設けられています。でもそばに教師がいないので、自分で自分を管理して、いついつまでに出すというプレッシャーを自分でかけなければなりません。しめきりに遅れたらペナルティもありますけど、なにせ教師がそばにいないので、実質的にはほとんどプレッシャーを感じないんですね。

いや、こう言ってはなんですが、まともな感性の持ち主であれば、対面授業であれオンライン授業であれ、課題の締め切りに本質的な違いはなく、いずれにも同じような対応ができるはずです。ところが、そうした自己管理ができない、あるいはとても下手、もっと厳しい言い方をすれば、他人に管理してもらわないと自分に厳しくできない、そういう点で少々幼いというか、甘えん坊タイプの人がいるんですね。

そうした自律や自己管理が苦手な学生は、オンライン授業や遠隔授業ばかりが続くと、だんだん混乱してきます。次々にメールやLMSで届く課題をさばききれなくなるのです。学校に登校しての対面授業なら、時間割やカリキュラムに従って「この時間はこれ、次はこれ、そしてこれ」というように時系列で授業に出て学びます。ところがオンラインではもっと自由に、例えば「夜型だからバイトを昼に済ませて、深夜に課題に取り組もう」とか、「この課題は簡単だから先に仕上げて、残りをあの課題に当てよう」とかその人なりの学び方ができます。これはオンライン授業の利点ですが、その利点が人によってはマイナスに働くようなのです。

そしてまた、そうした学生は往々にして真面目だったりします。真面目であるがゆえに、課題の自己管理ができないことにも悩み、またそれぞれの課題にどれくらい力を入れるか(あるいは抜くか)の調整ができずに、すべての課題に全力投球してしまい、完璧を目指そうとして締め切りに遅れ、それが積み重なることで自分を責め、夜も寝られなくなり、疲労がたまり……と悪循環に陥っていくのです。

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https://www.irasutoya.com/2015/01/blog-post_309.html

私自身は自分のペースで学ぶ方が楽な人間なので、そういう学生もいるのだということに気づけたことは幸いでした。というか、もっと早く気づいてあげればよかったです。自律や自己管理が必要なオンライン授業の形態になじめない学生については、登校させて「密」に気をつけながら学校の教室からオンライン授業に参加させるとか、こまめに面談を行うとか、今後はそうしたケアが必要ではないかと思っています。