インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

石炭の思い出

Twitterでヒロヲカさん(@shirlywang)が「たどん」についてアンケートを取ってらっしゃいました。今のところ「わかります」と「わかりません」が半々くらいのようです。


私は九州の田舎で「たどん」を使っていました。ただ記憶は曖昧ですが、たぶんそれは手で丸めたものでは既になく、型を使って作られた「豆炭」だったのではないかと思います。掘りごたつでは「練炭」を使っていました。円筒状で小さな穴がたくさん開いているアレです。練炭は大人になってからも田舎ではけっこう使われていたと思います。あと、直径5cmくらいの棒状の練炭もあって、適当に折って使っていたんですけど、あれは何という名前だったかな(ネットで検索したら「オガ炭」という名前が出てきました)。

小学校低学年の頃は、学校に石炭置き場があったのを覚えています。資材置き場みたいな感じでベニヤ板で仕切られていて、中に石炭が積まれていました。たぶん冬の暖房用だと思いますけど、教室で石炭ストーブが使われていた記憶はないので、それ以前の時代のものが残っていただけだったのだと思います。もしくは学校の一部で(ボイラー室とか)使われていたか。

教室のストーブといえば、生徒が持ってきた弁当を暖めるために使われていました。当時はみんなアルミやアルマイトの弁当箱で、先生が弁当箱を集めてストーブの周りや上に置いておいてくれるのです。今のお若い方にはちょっと想像がつかないような光景だと思いますが、中国の留学生にこの話をすると「やってた!」という方もたまにいるので、寒い地方ではまだ残っているやり方なのかもしれません。

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https://www.irasutoya.com/2016/10/blog-post_297.html

中国といえば、個人的には石炭(とその燃える時)の匂いが深く結びついています。私が留学していたのは北の地方だったので、冬になると石炭が大活躍していました。北の地方は“暖気(スチーム)”などセントラルヒーティングが充実していて、スチームに通す蒸気なり温水なりは石炭ボイラーで作り出していたと思います。だから冬になるとキャンパスに石炭の燃えるあの独特の匂いが漂っているんですよね。

大きな施設や公共機関などでも石炭が主流だったので、冬はどこでもこの匂いがしていました。日本から飛行機で中国の空港に到着すると、一番最初に石炭の燃える匂いがして「ああ、中国に戻ってきたなあ……」と思ったものです。最近は中国に行けていませんが、たぶんもうあの匂いは、特に北京のような大都市では感じられなくなっているかもしれません。

また中国の冬の味覚といえば、私はなんといっても“涮羊肉(羊肉のしゃぶしゃぶ)”ですけど、あれも昔ながらの石炭(コークス)で鍋を炊いているお店があって、食事に独特の雰囲気を加えてくれます。ドーナツ状の鍋の下にコークスが赤く熾っていて、真ん中に細長い円錐状の煙突がついているあの鍋で食べる“涮羊肉”は格別の味でした。いまでもあるかなあ。それとも地球温暖化対策で全面禁止になっちゃってるかなあ。

もうひとつ個人的に思い出深いのは、美大受験のために取り組んでいた石膏デッサンです。これは石炭ではなく木炭ですが、石膏デッサンは美術用の細い木炭で描いていました。消しゴム代わりになるのは食パン。いまはどうなのか全く知りませんが、木炭と食パンで描くって、100年単位の昔からのやり方がそのまま残っている世界だったんですよね。美術の世界から離れて久しいので、そんなことをやっていたというのがかえって新鮮に感じられます。

石炭や木炭って、つい最近までは私たちの生活に深く関わりのあるものだったんですよね。石炭について書き出すと、筑豊のこと(炭鉱やボタ山上野英信氏……)など、とめどなく広がってしまいそうです。それはまた改めて書きたいと思います。