「かゆみ」の多い生涯を送ってきました。大学生の頃に軽度のアトピー性皮膚炎と診断されてから、つねに「かゆみ」が暮らしとともにありました。さいわい「軽度」だったので強い薬を使うほどではありませんでしたが、一時期はかなり厳格な食餌制限を強いられていました。米や麦、豆などの穀物がアレルゲンだと言われていたので、米飯もパンもうどんもラーメンも、さらには豆腐や味噌や醤油や、コーヒーまでNGだったのです。粟や稗ばっかり食べていて、当時はかなり鬱屈した生活でした。
お医者さんからは「あなたの場合はアレルゲンがそれほど激烈な反応を起こすわけではないので、『かゆみ』とつきあいながら食べる人生を選ぶこともできますよ」と言われ、食餌制限をやめました。以来、常に身体のどこかにじんわりとした「かゆみ」を感じながら生きてきました。「かゆみ」は人の集中力を削ぎます。仕事や勉強に集中したいときに「かゆみ」に襲われるたび、「ああ、この『かゆみ』がなかったら、どんなに快適かしら」といつも思っていました。顔もかゆくてよく掻くので赤くなり、一見日焼けしたように見えるので「海に行ってきたの?」と言われることもよくありました。
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一日のうちでも「かゆみ」には起伏があります。ほとんど感じないこともあれば、急に亢進してくることもある。私は暑がりで汗っかきな人間なので、歩いた後や何かを食べた後には必ず汗をかいてかゆくなります。もともと肌が荒れているところに汗がしみてかゆくなり、それを掻き壊してさらにかゆみが強くなる……という悪循環がよくありました。肌を掻き壊すと出血します。私は首の周りと背中が特にひどかったので、ワイシャツのカラーや肌着にはよく血痕がついていました。
……ところが。
男性版更年期障害とでもいうべき不定愁訴に悩まされ、慢性的な肩こりと腰痛で夜も安眠できなくなるにいたって、数年前からパーソナルトレーニングで体幹を鍛え始め、続いて勧められるままに筋トレを始め、だんだん楽しくなってきたので朝の始業前にもジムに通うようになって……ふと気づくと肌がきれいになっていました。
正直、ここ半年ほどはコロナ禍で超絶的に忙しかったこともあって皮膚のことを忘れていたのですが、先日脱衣所の鏡で自分の背中を見て、かつてのような傷が全くなくなっているのに気づいたのです。首回りも同様です。もちろん年齢が年齢ですから若い方々のように「すべすべのお肌」ではありませんが、ごく普通の中高年の肌になっていました。「かゆみ」も皆無とはいわないけれど、かなり軽快したように感じます。「かゆみ」が軽快して、肌を掻かなくなったから傷がなくなったのだと思います。
これまでアトピー性皮膚炎を何とかしようと、食餌制限に始まって、サプリや断酒やグルテンフリーや菜食や、はては“回龙汤*1”まで試してみたんですけど、どれもほとんど効果は確認できませんでした。でも自分の場合ただひとつ効果があったのは、自分で体を動かすこと(それもそこそこハードに)だったんですね。よく運動して、よく食べ、よく寝る(一日八時間寝ています)。
お医者さんから聞いたところでは、こうしたアレルギーには加齢に伴う変化がよくあるそうで、人によっては反応の出方がどんどん変わっていくそうです(「アレルギーマーチ*2」という言葉もあります)。私の場合、幼少時から鼻炎がひどかったのですが、アトピー性皮膚炎が出る頃になると鼻炎はなりを潜めていました。そして現在「かゆみ」から脱しつつある私の身体がどこに向かうのかは分からないのですが、できればこのまま「寛解」となってほしい。そのためにも筋トレなど身体を動かすことを続けようと思っています。
*1:中国語です。あまりハッキリ書くのも憚られる民間療法なので……検索してください。
*2:「アレルギーマーチ」を進行させないために|特集|43号|WEB版すこやかライフ|ぜん息などの情報館|大気環境・ぜん息などの情報館|独立行政法人環境再生保全機構