インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

すでにして現地について行けてない

中国語に“入鄉隨俗”という言葉がありまして、日本語では「郷に入っては郷に従え」などと訳されます。華人留学生の通訳クラスでこの言葉が出てきたので、「みなさんが日本で、自分の国とずいぶん違うと思った生活習慣は何ですか?」と聞いてみました。会社の面接などでこういう質問をすると、たいがいは日本人に「ヨイショ」して「日本人は物事をきっちり進める」とか「街がきれいに清掃されている」と言ったような答えが返ってきます。

ところが今回は「メールやLINEの返信が遅いこと」という答えが返ってきたので意外に思いました。それもかなり多くの人が「そう、そう」と同意を与えていたのです。へええ、日本でもLINEの既読無視などを気にしてすぐ返事する人が多いような気がしますが、現代の華人社会は、なかんずくメールやLINEやチャットなどを多用する若い世代の方々は、それ以上に早いレスポンスを求めているのでしょうか。

Twitterでそのようなことをつぶやいたら、何人かの方からも「そう、そう」というリプライを頂きました。私など、メールの返事はどちらかと言えば早いほうだと思いますが、LINEやチャットは苦手であまり使っていませんし、返事も、それが自分に向けての明らかな質問や指示の場合以外はしないことの方が多いです。グループチャットにおいては特に。でも今回華人留学生のみなさんの意外な意見を聞いて、ああ、こうやってだんだん世間と縁遠い老人になっていくのかしら、などと軽い危機感を覚えました。遅まきながらキャッチアップしていかねばなりますまい。

しかし。

すでにして私は中国語圏の現況について行けていないというか、置いてかれているのでした。ここ数年は毎年行っていた台湾にもコロナ禍でご無沙汰ですし、中国大陸や香港に至ってはその前からもう何年も足を運んでいません。以前は、中国に関わる仕事をしている以上、現地の今の空気を肌で知っとかなきゃプロ失格だ……なんて「エラソー」な口を叩いていたのに、この体たらく。それでなくても変化や発展の速度著しい中国をもう何年も体感していないのですから、いま現在のかの国についてはまったくもって語る資格がありません。

もちろんネットを通していろいろな情報にだけは接していますが、それは「業界外」の方々だって同じです。唯一私にとってありがたいのは、上述したように日々華人留学生のみなさんと接していることですが、その華人留学生のみなさんにしたって、故郷を離れ、日本に留学してもう何年も経っており、むしろマインドは「日本人化」が顕著な方も多いのです。

大昔の話ですが、かつて中国に長期留学して日本に帰ってきたら(その間一度も帰国しませんでした)、友人たちが話している「だんご三兄弟」の意味が分からず浦島太郎状態でした。当時大ヒットしていたんですけど、中国では日本のテレビを一切見ていなかったので……。ま、それはさておき、早くコロナ禍が収まって、また現地の空気を吸いに出かけたいです。それまでは現地に住んでいる知人や友人の話によくよく耳を傾けることにいたしましょう。やはりメールやチャットには即反応しなければいけないかなあ。

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https://www.irasutoya.com/2017/04/blog-post_95.html