インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

文章の書き方を学ぶ

中高年と呼ばれる年齢になり、どんどん衰えていくカラダとアタマに恐れをなして、これは鍛えるに如くはなしと思い立ったのがちょうど二年くらい前でした。以来、カラダのほうは体幹レーニングや筋トレを、そしてアタマのほうはこのブログを書き続けるという二本立てでここまで来ました。

どちらもすでに習慣化しているので、特に苦にもなりません。それでも文章のほうはなかなか思うように書けません。一年前や二年前のブログを読み返してみても、ああ、何だか読みにくい文章だなとか、回りくどい文章だなと思うことが多いです。それでも毎日文章を書くこと自体が「トライ&エラー」の繰り返しみたいなもので、続けていけば洗練とまではいかなくても、自分なりのやり方が出来上がってくるだろうと信じることにしています。

いまのところ、文章を書く上でいちばん励みになっているのは、コラムニストの小田嶋隆氏が、ネットラジオでの対談でおっしゃっていた言葉です。

(原稿を書くときにいつも気づくのは)自分は、物を書いている時のほうが頭がいいんだなっていうこと。頭がいいんだなって言うとちょっとアレですけども、結局、文章を書くことによって気づくことがすごくあるっていうことですよね。(中略)まずあらかじめ頭の中にあることを伝えるために外に出すっていうふうに考えがちだけども、実は書いているうちに、書いている段階で「ああそうだ」と気がつくことのほうがずっと多いんだと。

そうなんですよね。あれこれ考えているだけではなかなか文章にならないことが多くて、そんなときはとりあえず書き出しちゃうんです。そうすると、自分の中で「これも書け、あれも書け」という声が響き始めて、文章が出てくるような気がします。しかも、最初に考えていたのとはかなり違うところに行き着いたりする。「こんなん出ましたけど〜」という占い師みたい(古いですね)な感じです。

そうやって書いていると、百本か二百本に一本くらい、自分で言うのも大変おこがましいですけど「あれっ」と驚くようなイイことを書いているときがあります。これ、ホントに自分が書いたのかしら、という感じ。不思議なんですけど、トライ&エラーを繰り返しているうちに、それまでの自分では考えられなかったような達成が降りてくるというのは、スポーツや芸術の世界ではよく聞く話です。小田嶋隆氏もこうおっしゃっています。

書いているうちに考えが深まるんですよね。自分が書いたことを手がかりに、もう一歩先に考えを進めますから。そうすると、まあ二時間くらいかけて原稿用紙五枚くらいのものを書いたとすると、二枚目まで書いた時に、当初自分が予想していた結論よりももう一歩考えが深まってたりすることが、いつもじゃないけですけど、たまにあるんですよ。(中略)それは、物を書かなかったら決して気がつかなかったポイントで、それが一番、私は価値があるんじゃなかろうかなあと思っていて。

ブログを書き始める以前は、多少はテクニカルなことも学ぶべきかしらと思って、文章読本的な書物もあれこれ読みました。もはや古典ともいえる谷崎潤一郎氏の『文章読本』、丸谷才一氏の『文章読本』、三島由紀夫氏の『文章読本』はもうずいぶん前に読みましたが、あまり記憶に残っていません。むしろこれも古典と言っていい本多勝一氏の『日本語の作文技術』や岡崎洋三氏の『日本語とテンの打ち方』などのほうが自分の糧になったような気がします。

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https://www.irasutoya.com/2016/12/blog-post_233.html

最近はSNSやブログなどで文章を発信する方が増えたので(自分もそのひとり)、そうした方をターゲットにした文章読本的な出版物がたくさん出ています。私もそういった書籍の中から、直近では例えば三宅香帆氏の『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』とか川崎昌平氏の『書くための勇気: 「見方」が変わる文章術』などを読みましたが、いずれも私の心にはあまり響きませんでした(ごめんなさい)。

思うに、文章はテクニカルな面だけを追いかけてもたぶん実入りは少なくて、むしろいい小説やマンガを読むとか、いい映画を見るとか、いい音楽を聞くとか、そういうのが文章になにがしかの影響を与えるのかもしれません。あと、人と意見交換したり議論したりすると、自分でも思いもよらなかった視点が手に入るような実感があります。

ところで、テクニカルな面だけを追いかけても仕方がないと書きつつ、すぐに前言を翻すようですが、わかりやすい文章を書くというきわめてテクニカルな点について、最近とても納得感のあった文章に出会いました。それはルポライター安田峰俊氏が「note」に書かれていた『片手間で教える文章講座「ユニバーサル日本語」の書き方』というシリーズ記事です。
note.com
ネット上に書く文章の一番基本になるところを丁寧に解説していらして、とても勉強になりました。特に「一文を短くする、逆接以外の『が』を使わない」というのは、ついつい文章が冗長になってしまう私にはとても示唆に富むポイントでした。そしてまた、ほかのポイントのうちいくつかは自分でも「こうじゃないかな」と手探りでやっていたテクニックだったので、とても心強く思えました。