Twitterのタイムラインで、とても興味深い写真を見かけました。門司港駅の改札に掲げられている横断幕の写真です。
日本語の文章の多くには主語がないんですが、英語に訳すと主語を入れる必要があります。機械翻訳ができない作業です。尚、are stoppedを言うと、「今止まっている」と言う意味になりますので、混乱を招くと思います。All trains stop at Moji station and Kokura station.の方が良いと思います。 pic.twitter.com/KBa7IfLuFa
— ロッシェル・カップ (@JICRochelle) 2019年6月29日
なるほど、横断幕に書かれた日本語には主語がありませんが、これは門司港駅から出る列車は全て門司駅と小倉駅に停まりますよ、どの列車に乗っても大丈夫ですよ、と旅客にお知らせする目的で掲げられたものなんですね。たぶん駅の改札で「この列車は門司駅に停まりますか」「小倉駅に停まりますか」というおたずねがあまりに多いので、いちいち答える煩雑さを解消しようと駅側が設置したものなのでしょう。
実は私の実家は北九州市にありまして、門司港駅にも何度も行ったことがあります。確かにこんな横断幕がかかっていたような記憶がおぼろげながらにありますが、そこに英語と韓国語と中国語が足されたんですね(以前はなかったように思います)。そして上掲のツイートは、その英語が少々不自然であり、それは主語を往々にして省略する日本語をそのまま訳した結果ですよと指摘されているわけです。
わははは(笑ってる場合じゃないけれど)、これは面白いです。門司港駅は九州の最北端にある終着駅でして、逆にここから出発する全ての列車はお隣の門司駅、さらにその先の小倉駅に停まって、それから各停や急行などに変わるんですね。そういうシチュエーションが共有されていればそれほど誤解を招くことはない訳文でしょうけど、それでも英語と日本語の大きな違い、主語の「絶対不可欠さ」を考慮に入れずに訳しちゃったというのが、興味深いと思いました。常々申し上げている、日本人の外語に対する「ナイーブ」な感覚が露呈しているような気がして。
中国語も基本的には主語がはっきりと提示される言語ですが、この横断幕の訳文は主語のない日本語の曖昧さが悪い方に作用して、「このすべては門司駅と小倉駅に停まる」……と何だか抽象的なポエムみたいになっちゃってます。まあこれも駅に掲げられている横断幕だから、たぶん全ての列車が止まるんだろうなと中国語母語話者のみなさんも理解してくださるとは思いますけど。せめて英語の“All trains”と同じように主語として“所有列车”か何かを入れるとよかったですね。
ちなみに韓国語の訳文ですが、同僚の韓国人に聞いてみたところ、特におかしなところもないし問題なく理解されると思う、とのお答えでした。